最適な解

霧雨52号
テーマ「依存」
作者:峰々碧
分類:テーマ作品

君は泣いていた 隠れて泣いていた 僕は偶々それを見つけた 
困っている人が目の前にいて、何も分からないから話をした
やがて君は笑ってくれた。いっぱい、とてもいっぱい
そしたら、自分がピンチに駆け付けたヒーローみたいで誇らしかった
あの時、僕はやっと世界に必要とされた気がしたんだ
 
君はとても元気になった。「もう大丈夫。」今、君はステージの上にいる。
スポットライトが照す君は、紛れもなく僕が好きになった君だった。
君は舞う。舞い続ける。完璧だった。
良かった、良かった、良かった。「良かったよ、本当に」
至る所から声援が聞こえる。君はそれに笑顔で答える。
あるべき姿だと思う。
 
こうして眺めていると、君が離れていく気がする。
でも、それは違うのだろう。最初から近づいてすらいなかったのだから。
君は僕がいなくても笑って生きて行ける。最初から知っていたこと。
偶然、君は泣いていただけで、弱いわけじゃない。弱いのは僕だけ。
僕は君を救える そう思うことで自分の存在を肯定していた 
本当の意味で救われていたのは僕だった
 
君を助けたかった その気持ちは本当だ
それ以上は何も望まないはずだったのにって 自分でも予想外だったふりをしてみる
僕は弱いから特別がほしくなるって、最初から分かっていたことだ
あの微笑みを僕にだけ見せてくれるんだよね、なんて言うくらいなら死んだ方がいい
それに、僕は確かに弱いけれど、君がいなくなっても死ぬわけではない
君がいなくなって空白ができたとしても、それは元から空白だったはずだ
だからといって、君がいたことをなかったことにするのはできない
僕は程よく大人だから、どちらにも振り切れない 
 
だから、僕は、ちょっとだけ元気のない君が好き、ってことにしている


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?