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弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 第16話 涙の訳
娘にとって2度目の吹奏楽コンクール地区予選が終わった。結果発表は17時半くらいかな、ネット上で判明する。
帰りのバスが学校へ到着したのは14時くらいだった。
保護者達が楽器を3階の音楽室まで運ぶ手伝いを始めた。
毎回演奏のイベントがあると楽器運びを手伝うのだが、なぜ音楽室を3階に設計しているのか疑問だ。
特に打楽器を運ぶのは一苦労・・・
最後の方になると、階段の踊り場で呼吸を荒くしたパパ達が鬼の形相で待ち構えている。
『このティンパニで最後で〜す!』
ティンパニがどういう楽器かなんて知らないパパ達は、『最後』というワードに反応して崩れ落ちる。
音楽室には子供達、先生、保護者、OB・OGが集まり出した。
こんなに保護者が集まってくれたのは初めてかも。先生がそう言っていた。
通信紙を発行したり、動画配信をやったり、色々と活動をしてきた成果が出始めたのかもしれない。そうだと良いけど・・
反省会ミーティングが始まった。
先生は指揮で大きなミスをした事を申し訳なく話していた。人間だもの、ナイストライです。
子供達一人一人が感想を話していく。
皆んな満足の行く演奏では無かったようで、失敗したところや緊張で動きが悪かったことなどを話す子が多かった。
演奏後、会場で泣いていた子の順番がやってきた。主にマリンバを担当し、ソロの演奏もあった子だ。1年生の時は運動部だったが、その時に色々あって、2年生で吹奏楽部へ転入してきた子。人一倍練習して、3年生最後の夏のコンクールを迎えていた。
後から知ったがマリンバ自体にトラブルが発生していたようで、本番までの時間では調整が間に合わなかった。そんな響かないマリンバで演奏を乗り切っていたのだった。
『練習してきた成果を出せず悔しい、県大会に行けたら必ずリベンジしたい』
彼女は決して人のせいにはしなかった。
保護者が楽器運びをした時、持ってはいけない部分を触ったり、壁にぶつけてしまったり、雑に扱っていたのは間違いなかった。しかもそんな重大な影響を与えるなんて知識も無い。
久しく県大会進出を経験していない弱小吹奏楽部である。
いろんなところにモロさが出る。
彼女の涙は、楽器に対する向き合い方を変えてくれた。まだまだ勉強不足。本当に伸びしろしかない。
結果発表は夕方だが、まさかそのまま3〜4時間も音楽室で待機しているわけにもいかず、全員で記念撮影をして解散。
今日撮影した写真や動画を編集しながら結果発表を待つことにした。
上位大会に行けたらこの動画を保護者達に配信しよう。おめでとう❗️のテロップを入れて。
17時をまわり、地元の吹奏楽連盟のホームページはアクセス集中でなかなか閲覧できない状態になっていた。
娘の叫び声が聞こえた。
『どうした? まさか!』
地区予選を突破した。5年ぶりの県大会出場が決まった!
保護者向けの通信紙で号外を作ろう。
週明けすぐ配布できるように準備しなくては!
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