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ぼやけたままで

ミラーレスの単焦点レンズを買った。普段フィルムで撮るときはずっと単焦点を使っていたけれど、デジタルの手軽さでパシャパシャ撮れるとなるとまた違った楽しさがある。玉ボケが楽しくて光ばかり撮ってしまう。

光の触れられないところが好きだ。手を伸ばしてもすり抜けて、遠くてきらきらしている。ぼやけた光を撮るとき、光の触れないところをそのまま切り取れた感じがしてちょっとうれしい。

ときどき、いろんな触れられないもののことを考える。光、音、思い出、感情。さわれないからこそいろんな形でいられるのかもしれない。

恋人。触れても触れてもまだ遠くに感じてしまうのは、本当は私の中にいる子どもの私のことも一緒に抱きしめてほしいと思ってしまっているからかもしれない。

あなたはあなたの人生があって、私には私の人生があって、その上で一緒にいることでより良い人生になるのが理想だけれど、それでもときどき、ほんの一瞬、あなたに救われたいと、助けてほしいと思ってしまう。あなたになら。自分を本当の意味で救えるのは自分だけだとわかっているのに。

助かりたいと思いながら、同時にこのままがいいとも思う。自分にはまだ救われるだけの覚悟がない。どういう状態がゴールなのかもわからない。

自分の中の過去の自分も、今生きている自分も、どこか輪郭がぼんやりしている。いずれはっきりしてくるのだろうか。そのとき何か見えてくるのだろうか。

今はまだぼやけたままで、いろんな形をとりながらいられたらいいのかもしれない。私の中の子どもの私も、今の私も、いつかさびしくなくなりますように。