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同人原稿おぼえがき(小説)

本記事はBLを扱う同人誌・二次創作について記載しております。該当する部分は掲載しておりませんが、成人向け同人誌の本文を内容に含みます。

いつも装丁などの仕様をnoteに書いていましたが、そういえば自分がどう原稿してどう本をつくっているかというのをどこにも書いたことがなかったなあ…と思い、振り返りがてら記録します。
素人の話なので技術的に面白い話はあまりなさそうではあるのですが、周囲に「本を出してみたい」という方が増えてきたので、わたしはこんな感じだよ〜というのが少しでも参考になればいいな〜と思っています。
またあくまで素人の話なのでこれ用語の使い方が違うよ…これもっと効率よくできるよ…なんてことがあればぜひツッコミを入れていただけると助かります。常に手探りなので…!

以下の記事を拝見して自分も書こうかな?と思ったので引用します。漫画を発行されるまでの思考や作業について丁寧に書かれているのでとても面白い記事です〜こちらもぜひ!
今回記事を書くにあたってかなり参考にさせていただきました。

作業をする人

・在宅勤務フリーランス(ので仕事時間まちまち)
・一日の原稿時間は1〜2時間
・「原稿をする」と決めたら基本毎日やる
・MacBookとiPhoneで作業、チェックのみiPad
・原稿の場合は基本文字打ちはPC(短い話ならスマホで完結することも)

作業分量

・普段の原稿は大抵4〜5万字、多くて8〜10万字くらい(過去一番長い話でも12万字くらい)
・あんまり長い話は書けず、いわゆる中編が得意だと自認しています
・SNSにのせる短い話(掌編)を書くのも好き(2000〜3000字程度で着地)
・掌編はプロットをつくらず、1万字以上の話はプロットをつくる
・本にするなら大抵は2万字以上で考える

作業内容・スケジュール

プロット→スケジューリング→本文→(本文の途中で)表紙→本文→組版・扉作成→校正→入稿 が主な作業です。

今は4〜5字程度で1ヶ月、8万字程度で2ヶ月のペースです。今のジャンルは比較的書きやすいのでこのペースですが、会話が難しいキャラのジャンルは4万字に2〜3ヶ月かけていることもありました。

好きな印刷所

先の記事にならって笑、作業内容を連ねる前に推し印刷所を紹介します。ここ1〜2年くらいはこのどれかの印刷所を利用しています。

ブロスさん

ダントツの推し印刷所だったりします。いままでなんど窮地を救っていただいたか…。なんといっても締め切りが遅いのが魅力だと思います。ほかの印刷所で割増になるのでは?というくらいの日程が通常締め切りで驚きます。
20〜30Pでも背幅をきれいにとってくれるので、大抵文庫で100P以上の本だと必ず背がぴしっとした本をつくっていただけるところがお気に入り。オンデマンドでも本文がマットできれい。
あとわたしは本文用紙は美弾紙ノベルスが一番好きなので、その取扱があるところも好きです…!
入稿後不安になりがちなので、マイページで印刷進捗がわかり、発送時には連絡をくださるところもありがたいです。

くりえい社さん

最近よく使っている印刷所さん。ここも締め切りが遅いのが魅力だと思います。オンデマンドはなんと日曜イベントで金曜締め切り。前倒すことで早割も使用できます。
最近やりたかった仕様が小口染めとホログラムペーパー表紙だったので連続してお世話になりました。ここの小口染めは触ってもインクが手に付かないところがすごくうれしい…!
ジャンルによって驚くほど割り引かれる「ジャン割」があるところも魅力。
本文用紙にフロンティタフ(嵩高用紙)があるので、文庫で60Pくらいの薄い本を出す時に使ってみた〜い…と薄々目論んでいます。

ホープツーワンさん

比較的安価で特殊紙・特殊仕様が使える印刷所さん。季節によるフェアがいつも珍しい紙や仕様を取り扱っています。周囲で「推し印刷所」として挙げる字書きさんが多い印刷所の印象です。
基本料金でアートポストだけでなくアラレ模様やシルク模様のかかったかわいい表紙用紙や、コミックルンバ各色が使えるので、安価でちょっと凝ったテイストの本にできるところがお気に入り。
最低限仕様の「ポケットセット」は締切が遅いのもありがたいです。最低限と言いつつ特殊用紙も豊富なセットです。
また早期入稿できる方にはお得になるポイント還元があるので、気がつけばここでしか刷れない体になる…とも聞きます笑

日光企画さん

スモーキーフェアやホワイトオンデマンドフェア、カスタムハチペフェアなど、ほかの印刷所にはないかわいいフェアが多い印刷所さん。オンデマンドを使うなら口絵無料キャンペーンも魅力的です。
ここを利用する時は大抵上記のどれかのフェアを利用しています。電話口のお姉さんが優しい。最近オンデマンドの印刷機が変わって本文の印刷がすごくマットになったのもお気に入り。

その他使用したことがあるのは大陽出版さん・PICOさん・EditNetプリンテックさん・あかつき印刷さん・コミックモールさん・サンライズパブリケーションさん・しまや出版さんなどなど。やりたい仕様ありきで印刷所を選ぶので色々使ったことがあります。とりあえず本をつくるぞ!となったらブロスさんかな?という感じです。
印刷所についてはタイプ別にまとめたこともあるのでよかったらこちらもご覧ください〜!

1. まず出るイベントを決める

締切がないと、なにも、しない…!ので、まず本をどこ合わせで出すかが一番最初の思考ポイントです。イベントの日を決めたら逆算してどの程度の話なら書けるか…を考えます。大抵頭のなかにはざっくり書きたい話がいくつかあって「ここが締切ならこれなら書けるかな…」というものをピックアップしてテーブルに上げる、みたいなことをします。

2. プロット

1で書けそうな話を決めたらプロットをはじめます。掌編はスマホで全然書けちゃうのですが、原稿だとかしこまるのかPCでしか書けないです。MacのエディタであるiText Expressで書いていきます。

頭からとりあえず最後まで話をばーっと書いた後、書きたいところとそうでないところの差がかなり起きるので1週間くらいかけて全体の分量がある程度均一になるよう肉付けしていきます。

プロット

こんな感じで本文にしたとき2000〜3000字くらいのシーンごとに塊わけした形で内容をざっくり羅列していきます。わたしは掌編でもこれくらいの分量で話を広げて着地、が一番書きやすいので、それよりも長い話も大体これくらいの分量をずっと連続して書いていく…という感覚が強いです。

2000〜3000字というのはあくまで目安なので、長くなるときもあるけどそれはそれでいいことにして、詳細度が足りない場合は本文を書くときに苦しむのでプロット時点でできる限り足していきます。
プロットが粗方固まったら羅列したシーン数を頭から数えて、それを元に概算の文字数を見積もり、どれくらいの作業量が必要かを考えスケジュールを決めます。が、書いているうちにプロットはどんどん変わっていくし、気がつくと知らないシーンが生えたりもします。行きあたりばったり。

概算の文字数、は本当に概算で、これは「4万字くらいかな〜!」と思っていたものの着地が5万字だったり、「5万字かな?」と思っていたものが8万字だったりするので…大体終わりが見えてくるあとのほうが作業が乗っては来るので、乗るまでの苦行をどう進めるか、という観点でこういう進め方をしています。

本当はもっといいストーリーエディタだとかがあるんだろうな…と思いつつ、愚直にエディタに羅列…って感じになってます…

3. スケジュールを決める

本当は自由時間に集中して作業ができればいいのですが、集中力が、本当に、続かない…!ので毎日やる代わりに1日の作業時間は少なめです。また、現ジャンルがゲームジャンルなので、できる限り毎日ゲームする時間をとりたい、というのもあってこの作業スタイルになっています。

1日1時間〜2時間程度を仕事前の朝起きたときにやることが多いです。仕事あとだと疲れてしまって本文を書く思考ができなかったりするので…そういう部分は仕事時間の融通がきくのは利点なのかもしれないです。

プロットの時点で概算文字数を見積もっているので、そこから逆算してスケジュールを決めていきます。スプレッドシートで作業量を管理する、のをここ3年くらいずっとやっています。スケジュール立てした当日から締切2週間くらい前までの日付を引いて、できるだけこれ通りに埋めていきます。基本土日休みなのでそこに赤線を引いてます、が家庭環境の都合で休日も作業量は一緒です。

実際のスケジュール表

適度にあいているところは外出したり用事がある日だったり…この図上ではわりと順調に進んでいる雰囲気ですが、たまに3日くらいやる気が出ないときもあるので、そのときは柔軟にリスケして自分を責めすぎないよう進めます。

4. 本文を書く

これはもうあまり書くことがないです。ひたすらやっていきます。
わたしはプロットどおり頭から書くのが常です。
一旦「全部書けた!」となるまでは組版ソフトに移動せずずっとエディタで書きます。これもiText Express。

原稿はマラソンなので、マラソンに飽きたら原稿とは別に気晴らしに掌編を書いてTwitterに投稿する、などをよくします。

本文を書く時に使うもの

本文を書いているときに使うものはこの辺りです。類語辞典は色々あるのですが、連想類語時点はひとつの単語に対して「連想」でかなりの語句を出力してくれるので、その羅列を見ているとよりよい言葉が見つかるのでよく使っています。表現インフォは食事や景色の描写をするときに特に参考にします。

5. 表紙

表紙はいつも半分以上本文が書けてきたら作業に移ります。自分でつくってしまうことが多いです。
最近つくった表紙はこのあたり。大体1〜2日くらい、長い時で1週間くらいかけます。

最近の表紙

Illustratorで作業するのが好きです。Photoshopはあんまり得意じゃないけれど写真を使った表紙をつくりたいときはがんばって使います。

6. 組版

本文ができたらテンプレに流します。PCがMacなのでWord環境がないことと、Adobe製品を契約している環境にあるのでInDesignを使っています。
長らく自分で見様見真似でつくったテンプレを使っていたのですが、友人に詳しい方がいて、最近憧れのBLレーベルの本文を参考にするかたちで組版してもらいました。持つべきものは友達だな…ありがとう…

本文レイアウト

文字サイズは12Q(8.5pt)、40文字×17行にしています。ノド等詳細な設定は以下。

本文レイアウト設定

このテンプレに変えてから「本文がきれい」と褒めてもらえることが多くてうれしい〜!と思っています。友人の仕事です!!(ドヤ顔)
200P(10万字程度)の本だとちょっとノドが詰まり気味かもな〜と思いもしたのですが、前述の通りそこまでの分量は滅多に書かないのでこれがちょうどいいかなと思っています。

目次と扉

章わけしている話についてはそれにあわせて目次や扉も作成します。本の表紙に使った素材や本の雰囲気に合わせて飾り枠やワンポイント素材などを貼り付けていきます。

あとがきを書く

行程、というほどでもないのですが…あとがきは組版のタイミングで書きます。
本文が書き終わった直後のいちばん正気を失っているときに書いてるので後でみるといつも塵になりがちなのですが、本はもう限られた人しか見ないでしょ!という奢りのもと、毎回あとがきを書き連ねていたり、します…

以前のあとがき(1ページ)

以前はこんな感じで巻末1ページにあとがきを書いていたのですが、「入り切らん!!!!!」ということが多かったので、本文をつくりかえるときに以下のような感じの書式に変更していただきました。以降毎回2000字分くらい書いています(…)

7. PDF出力をして校正

すべてのデータをInDesignに流し終えたらPDFを出力して本文をチェックします。10.5インチのiPadにPDFを渡して、AcrobatとApple Pencilでチェック作業をしています。ただ、校正という作業が本当に苦手で苦手で…。自分だけだと不安なので、二次創作・R18表現OKの有料の校正サービスを利用したり、本当に厳しいときは友人にもチェックしてもらいます。

チェックをお願いする時はGoogleドキュメントか、PDF出力したものを渡してお願いしています。
最近お願いしたときはチェック量が多い初稿はGoogleドキュメントで、その後別の友人にPDFを見てもらっています。Googleドキュメントだと言いかえ案を反映しやすいし、PDFチェックだと途中で文章が途切れていたりや縦中横忘れなどの人的ミスを発見してもらえるのでどちらも助かっています…

言い換え案の提案などなど

友人にチェックしてもらうときはこういう感想がたまに入っていてそれも好きだったりします笑 元気出る〜のでわたしも下読みをお願いされたときはたくさん入れる…;)

8. 入稿

すべてのデータが揃ったら入稿します。入稿のときはいつも緊張して胃がきりきりしたりします…何度やっても慣れない。

なぜ本をつくるのか

1ヶ月以上も長期に渡って作業して、わざわざ印刷物にするのは以下のような理由がある気がします。
・自カプが大好きなので(クオリティはともかく)一冊でも本が増えて欲しい
・誰にも文句をつけられずに好きな内容と仕様を選んでなにかをつくれるのが楽しい
・不特定多数に見られるわけじゃないので閉じたことが書ける(特にわたしの場合はあとがき)
・まとまった長さなら本がいい(webだとどうしても3万字以上を読むのが億劫になってしまいがちで…)本ならまだ読みやすいと感じるので、そういう方向けに本にしています
こんなところかなと。webもwebで利点がある(即時に見てもらえる、修正ができる)ので、どちらも楽しくやっていければなー!がいまの心境です。

どこまでも趣味の活動なので「苦しくならない」「無理をしない」をモットーにやっています。それでも切羽詰まるとメンタル面にきたりはしてしまうのですができる限りそうならないように…というセルフケアの面からも、頼れる友人の手を借りて進めることが多くあります。作業通話も時折します。本文作業中は1人のことが多いのですが、表紙作業やチェックのときは大抵通話するかなーと思います。

わたしは同人誌が大好きなのでもしも「本を出してみたいけどよくわからん…」という友人知人がいたらぜひ声をかけてほしい!と思うタイプです。あくまでわたしの知っている範囲でしか答えられないですしそれゆえ自分からぐいぐい行けはしないのですが……それでもそれでこの世に一冊でも本が増えるなら最高だなと思うので…!
この記事を読んで「自分にはそう頼れる人はいない…」と思う方がいらしたらnoteやTwitterにさまざまな同人ノウハウが載っているので調べてみるのがおすすめです。わたしも日々検索していつも参考にしています。ので、そういうコミュニティに自分もお返しがしたくて、手探りながらこういうnoteを書いていたりします。

以上2022年9月現在のおぼえがきでした。少しでも面白く思ってもらえたらうれしいです。この本文中に出てくるプロット等の最新刊は10月頭合わせイベントのものなので、イベント楽しみだな〜!という気持ちでこれを書いています。


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