興味を持たせることに、興味がなくなってきた

教育の仕事をしている中で最大の効果を上げる方法を問われたら、間違いなく興味を持ってもらうことだろうと思う。

分かりやすく伝えるとか、相手のレベルに合わせて伝えるとか、そういうテクニックもとりあえず大事だけれど、身に付けてもらいたい事柄に対して相手が興味を持っていなければ効果は薄い。
逆に、興味を持ってしまえば、教える側が丁寧に教えなくても、自分で勝手に調べて身に付けてくれるし、分からないことを積極的に質問して勝手に理解を深めてくれる。

だから人に教える仕事をしている中で、どうすれば相手が興味を持ってくれるかを考えて試行錯誤をしていたつもり。

だけど、最近は興味を持たせることに対して興味がなくなってしまった。
というよりも、ほとんど無意味だと思うようになった。
興味というのは他人からの影響だけで持つようなものではないのかもしれない。

私は新人のITエンジニアとか、これからITエンジニアを目指す人に向けてプログラミングを教えている。
でもそういう人たちの中にも明らかにプログラミングに興味がなさそうな人は一定数存在する。
仕事でプログラミングをするなら、1日長くて8時間以上プログラミングと向き合わなければいけない日もある。
そう考えると絶対にプログラミングを楽しんだ方が良いし、興味を持っていたほうが明らかに成長のスピードも速い。

だからどうにかして興味を持ってもらおうとして色々な話をしていたつもりだけど、たぶんほとんどの場合無意味に終わっていたのだと思う。

私は普段車で通勤をしている。
毎日、時間でいうと往復で1時間以上は運転をしていることになる。
ただ、運転が好きかと言われると別に好きではなくて、むしろ嫌いである。
そして車にもあまり興味がなくて、車種にもこだわりはないし、正直なところ車がどういう仕組みで動いているかもよく知らない。
何かトラブルが起きた時自分1人で対処はできないと思う。

でも、毎日1時間以上もの時間を運転に使っているなら、絶対に運転が楽しい方が良いに決まっているし、車の中も快適な方が良いし、何かトラブルが起きた時のためにある程度車に関する知識も知っておいた方が良いに決まっている。
そうだと分かっているのに、どうしても車や運転に対して興味を持つことができない。

もちろん、人生は何が起こるか分からない。
今後何かのきっかけで車が好きになったり、運転が好きになる可能性は否定できないし十分あり得る。
だけど今現在、車の魅力を誰にどれだけ語られたとしても、車を好きになりそうな気配はない。

おそらく、自動車教習所で私に運転を教えていた教官の人たちは、私のことを「こいつ運転に興味なさそうだな」と思っただろうと思う。
車を購入したときの車屋さんの人も、「こいつ車に興味なさそうだな」と思っただろうと思う。
実際、免許も車も通学や通勤に必要だったから仕方なしに取得した感はあったので、興味はなかったし、何を言われてもあまりピンとこなかったんだろうと思う。

ITエンジニアを目指していながらプログラミングに興味がないというのもきっとこういう感覚なんじゃないかと思う。
そう考えると、私がどれだけプログラミングの楽しさを語ったところで意味はなさそうだ。

ただ、今まで興味を持っていなかったものに対して何かのきっかけで興味を持つようになることは往々にしてある。

私は学生の頃は歴史に対して全く興味を持てなった。
でも、数年前にサピエンス全史という本を読んで、歴史の楽しさを知り、歴史をもっと学びたいと思うようになった。
私の知人で投資にほとんど興味がなかった人が、あっちゃんのYouTube大学のお金にかんする動画を見て投資に興味を持った人もいる。
そんな感じで、何かの影響で急に興味を持ち始めることは確かにある。

ただし、これも100%外部からの要因で興味を持ったかというと、そうではないと思う。
上で話した通り、私が歴史が楽しいと思い始めたのはサピエンス全史という本を読んだことがきっかけだが、そもそも歴史に対して1ミリも興味を持っていなかったら、その本を読もうとは思わなかっただろう。
少なからず歴史を知りたいという気持があったから、そのきっかけによって好きになった。
投資に興味を持った知人も、普段からお金に対して漠然を不安があるなど、投資に興味を持つための種が自分の中にあったのではないかと思う。

そう考えると、今まで興味がなかったものに対して外部からの要因で興味を持つ可能性はあるけれど、それは本人に少なからず興味の種があってこそではないかと思う。
そしてその種を作るのはきっと他人の説得では無理だろうと思う。

つまり何が言いたいかというと、興味を持たせるという目的をもって誰かと対話をしたり、何かを語るのは無意味なのでやめようと思う。
その代わり、興味を持って積極的に質問してくる人に多くの時間を割こうと思う。
そして、それ以外は自分が新しいことを学んで楽しんでいる姿を見せたり、興味を持たせるという目的を持たずに、ひたすら雑談ベースで対話を続けて、興味のきっかけが生まれるのを待つようにしよう。

サポートいただくとめちゃくちゃ喜びます。素敵なコンテンツを発信できるように使わせていただきます。