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パート先で教わる中国語 ~ともだち編 その1~

コロナによる入国制限が緩和され、パート先では中国以外からも積極的に技能実習生を雇うようになった(ベトナム、フィリピン、etc)。すっかり国際色豊かになった職場でつくづく思うのは、「笑顔」は何にも勝るコミュニケーション手段だなぁ、ということである。


技能実習生の方たちの多くは、すれ違う時や目が合ったときに、ニコッ😊としてくれる(主に女性)。私は今まで同僚と微笑み合う習慣はなく、目が合ったら光の速さで逸らしてきたので、彼女たちのスマイルはカルチャーショックだったが、同時に すごく嬉しかった。それからは 私も真似しようと決意し、初めはうっかり目を逸らしたり、ぎこちない笑顔だったりもしたけれど、だんだんと満面の笑みを返せるようになってきた。

挨拶するとき、すれ違ったとき、離れた場所でふと目が合ったとき、お互いに微笑み合うだけで「元気?」「頑張ってるね」「疲れたね」といったメッセージを伝えられる。受け取った人は必ず笑顔を返してくれるし、それがきっかけで 初対面の実習生の方と 会話が始まったこともある。何を隠そう、私は雑談(スモールトーク)があまり得意ではないので、ニコッ😊だけで通じるのはありがたい。
英会話を習いはじめた頃、先生が「Keep smiling! Keep eye contact! Loud voice! (笑顔で、目を見て、大きい声で!)」と よく言っていたが、本当に「笑顔」の効果は絶大だなぁ~と、今さらながら実感したのだった。(とはいえ、日本人の同僚にやると変に思われそうなので、今のところ技能実習生の同僚に対してだけやっている。)


さて、中国からの技能実習生の方たちとは、その後ますます活発にコミュニケーションをとっている。なぜかというと、私が彼女たちに野菜を売り始め、それと前後してWe Chatを交換したからである。


始まりは、Gさんに「月饼を食べましたか?」と尋ねたことからだった。9月の初め、私は中国語のオンラインクラスで、中秋节のことを学んだ。中秋节とは、日本語で言うと「中秋節(中秋節)」、月を愛でる祝日であり、月饼(月餅)は欠かせない食べ物らしい。それを聞いて私は、月餅ってお月見のときに食べるんだ!日本のお月見(=仲秋の名月)って中国から来てたんだ!端午节(5月にある中国の祝日)は、日本の端午の節句だし、日本には中国からやって来た文化がたくさんあるんだなぁ!と、日本と中国の深い繋がりを知って嬉しくなった。

中秋节が終わって少し経った頃、Gさんとペアで仕事をしていたときに、2~3分の空き時間ができた。Gさんは日本語が得意ではなく、私は中国語が得意ではないため、筆談をするべく私は紙とペンを取った。
私「じょん、ちう…(中秋节と書く)」
Gさん「中秋节!😲」
私「你、吃、了…」
Gさん「月饼!😊」
私「😊(うなずく)」
Gさん「日本有月饼吗(ゆっくり言いながら、書いてくれる)」
私「ないです。え~と、日本は、…だんご」
Gさん「😲?」「中国月饼给你吃(ゆっくり言いながら、書いてくれる)」
私「😊?(『给』の意味を知らないので、Gさんが何を言ってるのか分からない)」

その2日後、今度はGさんとDさんと3人で仕事をすることになった(Dさんは日本語が少し得意)。
Dさん「中国の……(両手を合わせて丸を作る)」
私「月饼?」
Gさん「😊」
Dさん「对对对😳 Gさん、月饼、あなた(あげる、のジェスチャー)」
私「えっ?月饼くれるんですか?」
Gさん「😊」
Dさん「(しー🤫のジェスチャーをしながら)あなた、12時、帰る、Gさん、一緒に…(更衣室の方向を指差す。月饼をロッカーに置いてあるので、私が帰るときに持たせてくれるらしい)」
私「ありがとうございます😊分かりました」
Dさん「あなた、We Chat…」
私「ある😳(以前アカウントだけ作った)」
Dさん「ある!私と、Gさん、あなた、We Chat、友だち😊」
私「うんうん、友だち!お願いします😊」
かくして私は その日、Gさんから月饼を、Dさんから We ChatのIDを受け取って、帰路についた。月饼は中国から郵送してもらったものだそうで、サクサクのパイ生地の中にバナナ風味の餡が入っていて、とても美味しかった。月饼の餡にはいろいろな種類があり(おかず系も)、中秋節の日(8月15日)は家族みんなが集まって夕食を囲み、月饼を食べ、一緒に月を愛でる、とDさんがWe Chatで教えてくれた。Dさん経由でGさんの連絡先も分かったので、早速お礼のWe Chatを送り、後日 お返しに地元の和菓子店のお菓子を持参した。


そのまた翌週、今度はCさんとペアになった。
Cさん「あなたのご主人のお母さん、今 畑で何作ってる?」
私「え~と、じゃがいもとか、落花生とか…」
Cさん「らっかせい…?」
私「私も野菜作ってますよ。大根とか、にんじんとか(←市民農園を借りている)」
Cさん「あなた野菜余る、会社に持ってくる」
私「いいですよ😊」
Cさん「Dさん、じゃがいも好き」
私「あ、そうなんですか?😄」

日を置かずして、再びDさんと一緒になった。
Dさん「あなた、野菜…」(両手で拳大の丸をつくって、トントントン…と、薄切りにするジェスチャーをする)
私「じゃがいも!」
Dさん「?(土豆、と書いてくれる)」
私「うんうん(確かこれは『じゃがいも』だったはず)」
Dさん「ある?」
私「うん、ある」
Dさん「あなた、持ってくる。私、お金…」
私「払う?うんうん、わかりました😊」「(土豆は) どれくらい?」
Dさん「多い、大丈夫!私、…箱」(箱のジェスチャー)
私「えっ?(そんなに大きい箱、Dさんの自転車に)載らないよ😂」
Dさん「We Chat👍」
私「We Chat👍」
帰宅後、Dさんと私はWe Chatを使って話をし、私が市民農園(55000円/年)で作った野菜を、スーパーで売られている値段と同じ額でDさんたちが買う、ということで交渉が成立した。


彼女たちが私に「野菜を持ってきて」と言ったのには理由がある。前回の記事にも書いたが、彼女たちが住んでいる寮は山の麓にあり、会社もスーパーもコンビニも、パン屋さんも役場も公園も病院も、何もかもが遠いのだ(よっぽどサイクリング好きの人ならともかく、毎日残業して3週連続で週休1日ということもざらにある彼女たちに、休みの日までママチャリで遠出する元気はあるだろうか)。あと、Aさんが以前言っていたのには、今年の夏に社員寮の庭で野菜を育てたが、肥料を買えず小さいのしかできなかったとか(本来は 毎シーズン野菜を植える前に、土に石灰と肥料(鶏糞)を撒いて、トラクターで耕さないといけない)。
一方 私が住んでいる地域は、そこそこ田舎だがスーパーやコンビニが乱立しており、JAの産地直売所もあるので買い物には困らない。市民農園は、私と子どもの農業体験のために 今年初めて借りたのだが、野菜が大量に採れて食べきれず困っていた。なので、彼女たちの依頼は私にとってもありがたいものだった。

というわけで、さっそく野菜を持って行こうと思ったが、市民農園の冬野菜は先月植えたばかりでまだ収穫できない。私はDさんに「スーパーで買って持って行きますよ」と提案し、産直でどんな野菜がいくらで売られているかを伝えた。
Dさんたちからのリクエストは、土豆🥔 7袋、冬瓜 4個、红薯 🍠5袋、ちいさい苹果🍎 2パック、洋白菜(キャベツ) 1個、橘子🍊 1袋、辣椒(唐辛子) 3袋、南瓜 1/2個、茄子 1袋、葱 1袋、青椒(ピーマン) 2袋 だった。多すぎて会社で手渡しはできないため、Dさんたちが住む社員寮まで、車で届けることにした。

買い物のときはイヤイヤ期の我が子も一緒に行った。その日は たまたま機嫌が良く、産直とスーパー2軒 (の産直コーナー) をハシゴすることができた。Dさんは 子どもを気遣ってくれ、買い物に行く前も、
「你不用着急呀,我理解你还要照看你家孩子,你什么期间去都行呀,不着急的,我也非常抱歉,你有小孩要照看,还要帮我们完成任务,我心里非常感激你(買い物は急がないから、いつでも大丈夫です!)」
「有疫情,你带孩子去商场注意⚠️做好防护,带好口罩呀(病気が流行ってるから、スーパーに行くときは子どもにマスクをつけてあげてね)」
「你还要照看孩子。一前提把孩子照看好再买(子どもの面倒をみることを優先してね)」
買ったものを届ける前も、
「我炸的带鱼让你尝尝。你回家吃的时侯注意⚠️会有鱼刺!别让孩子吃呀(お土産に太刀魚を揚げました。骨があるから子どもには食べさせないで!)」
「本来想蒸个花卷让你带回去尝尝,我今天起床晚了,所以小麦粉到现在还没有开,所以现在还有做出来花卷(本当は花卷もあげたかったんだけど、起きるのが遅かったから、まだ出来てないんです)」
私が冬瓜2個と红薯🍠1袋を渡し忘れて自宅に持って帰ってしまったときも、
「别来了,明天带公司一样的。我们应该谢谢你。你赶紧看孩子吧(明日でいいよ。本当にありがとう。早く子どもをみてあげて)」
翌日も、
「以后从你家里买,这样方便。你看孩子很难,所以我们尽量的不要去麻烦你的(これからはスーパーに行かなくていいからね。子どもをみるのは大変なので、ご迷惑をおかけしないようにします)」
と、メッセージをくれた。(全て中国語だったため、私は翻訳アプリ『Deep L 翻訳』を使って解読し、返信するときも同アプリで中国語の文章を作成して送信した。)


私が買い物代行したことは、彼女たちを却って恐縮させてしまったようで、後日 Gさんからは「✉️我蒸的南瓜馒头,我叫Aさん带给你。」と 拳くらいの大きさの馒头を8個もいただき、Aさんからは「✉️我给你家女儿做的吃的。中国的小包子。明天给你带去。」と じゃがいものはさみ揚げと小豆あん入り小包子4個、肉入り小包子を4個いただき、Cさんからは「お菓子な~😊」と 手作りの麻花を1パックいただいた(どれも美味しかった)。


長くなったので、その2に続く