心の、手の届かないところに触れる

小林賢太郎作品には、そんな作品が数多くある。

大好きです。

見て見ぬふりをしている自分を見つけて、向き合わねば、という気持ちにさせてくれる。どんなに蓋をしても自分だけは絶対に誤魔化しきれないって、本当はわかってるんでしょう? と言われているような。

「うるう」や、小林賢太郎テレビ10の「本と嘘」。心の奥のほうで、感情がぐしゃっとなって手が届かなくなって、なかったことになっているようなところに染み渡っていく感覚がある。

寂しさや悲しみや苦悩を見ないふりして、時間の流れに任せて慣れることで、なかったことにした。そんなあれやこれを、優しさとあたたかさをこれでもかというくらいに湛えた純粋さが、包み込み染み渡る。

自分がしてきたこと、しないできたこと。やりたかったこと、やらなかったこと。人のせいにしたこと。かっこつけたこと、嘘をついたこと。言いたかったこと、言えなかったこと、言っちゃいけなかったこと。してもらったこと、できたこと。

いいとか悪いとか勝手に決めて、分けて、額に入れたことと、まるめて捨てたこと。押し込めて蓋をして鍵をかけたはずのところにも、きっちり染み入ってきて。

わたしの本当はどこにあるんだろう? と思わされる。

涙が出るほど純粋でまっすぐに、心の本当のところに届く。受け取ったからには、でも、とか、だって、とかじゃなく、素直に向き合いたい。

あと数年で「第二成人式」。そのときどんな景色を見るかは、いまの自分次第。だから、いま感じることから目を背けずに、自分に素直でありたいな、と思うわけです。

額装もせず、ゴミにもせず。いつでも手の届くところに本当を置いておけたら、それがきっと自分であるということだと思うから。



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