季節

扉を開けると川が流れていた
轟々とけたたましい音をたて
ドリルが土を掘り起こすように
渦巻きながら水しぶきをあげていた
慌てて扉を閉めた

扉を開けると海が広がった
波は浪状にあらず
壁のように黒々と立ちはだかり
ずんずんと押し進んでくる
再び扉を閉めた

扉を開けると空に繋がった
砂埃を巻き上げ田畑を舐めていく
家も車も人も空へ連れていかれる
形を見せつけながら堀りおこす風
無言で扉を閉めた

扉を開けると真っ白だった
開けたままで閉ざされている
隠す秘密などないのに
ぼくらは黙秘を続けている
扉は開けっぱなしだ

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