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公立病院改革2〈2006年〉首都圏100床 S市民病院(3)

そういえば、ふと思い出したことがある。
コンサルタントとしての教育を受けたことがないので、「成果品の装丁をどう作ると良いか」がまったく分からなかった。
もちろん冊子状のレポートを手渡すので、ホチキスで止めて、その止めた部分に背表紙を張って・・・というイメージはあったが。
それをどこで買って、どうつけるのかはよく分からなかった。

そして生まれて初めて、ASKULか何かで買った背表紙を美しく取り付けて、おカネを10万円、100万円いただくに相応しい冊子を完成させることに腐心した。
背表紙テープみたいなもので、夜な夜な、美しく見えるように背表紙を手で張っていたことを思い出す。

いわゆる大手コンサルの人たちは、こういう作業はアシスタントのような人たちがやるのかな。
この作成シーンが、S市民病院の仕事の中で一番印象的に残っている気がする。

さて本題の成果品作成に戻ろう。

第三章の人件費構造の分析は、初回のKN病院でも入れたが、当時は分析したというよりは、書籍等の受け売りをそのまま説明した感があった。
今回は、詳細な病院の給与資料をいただき、かつ、最新の労働統計などを入手して、主体的、分析的に取り組めた。
こうした客観的な資料から医師、看護師、准看護師、事務職員、その他の多角的な公民比較、年齢比較などができた。

この人件費構造の分析は、以降現在まで15年以上、あらゆる病院で行うことになるが、この病院で痛切に学んだことがある。
公立病院は、医師以外の職種の人件費が、民間よりも高い。看護師も准看護師も事務職員も、その他の職種もだ。
それは、極めて当り前のことであり、またそれを知る我々が、「おたくは人件費が高い」と指摘するのも当然のことなのだが。

大切なのは、その後だ。
構造を分析し、その内容を説明・共有し、理解し合っても、相手は公務員の病院だ。
じゃあ、高いからどうしろというのだ、と問われたときに、返す言葉がないのでは仕方がない。

だから、ただグラフを作って高いだ、低いだとやるのではない。
当然年齢層別の給与額、構成人数、採用事情、性別などを分析するわけだが、個々の病院ごと、地域ごとの分析結果に基づくトレンドに基づいて、考えられる対策を提案しなければならない。

こういうことは、民間企業、民間病院はある程度、自ら分析して採用政策を立てていくわけだが。
公務員の病院は様々な要因が絡んでいて、病院で独自の採用計画を立案することが、とても難しい。



【記してきた過去の公立病院改革】

公立病院改革1〈2005年〉北陸350床 KN病院(1)~(18)


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