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年賀状もまだ間に合う? レトロ印刷JAMで作ったもの振り返り

2021年の年賀状準備の為、過去制作物を見直していたところレトロ印刷JAMさんで制作した物が多く出てきました。
紙モノ好きのグラフィックデザイナーさんには説明不要の人気印刷会社さんですが、実はまだ利用した事がないんだよね…という人の為に、MY実例集をまとめてみました。
※ちなみに2021年の年賀状はレトロ印刷ではなく活版印刷にチャレンジしました。完成品や印刷会社さんについては年明けに記事にまとめる予定です。

レトロ印刷とは?

(以下、ホームページより引用

レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とした印刷所です。従来のフルカラー印刷とは根本的に考え方も違い、入稿データの作り方や印刷の原理も、シルクスクリーンや版画に近い作り方です。そのため、ランダムに版ズレやインクの色ムラ、カスれが起こりますが、印刷の風合いがとても昔っぽくなり、雰囲気のあるモノに仕上げてくれます。
それはまるで現代の版画!
紙にもこだわり、インクに良く合う紙を揃えております。インクのと紙の組み合わせで様々な表現が可能ですので、ぜひレトロ印刷で遊んでください!

上記の通り、一般的なオフセット印刷とは全く違う仕上がり感になるレトロ印刷。いわゆるリソグラフ印刷は、ひと昔前は安く上げる手段として不動産チラシ(やけに派手な1色インクで間取り図が掲載されているような)なんかでも見かけましたが、今では個性、風合いを求めた特殊印刷としてデザイナーさんがあえて採用している印象です。私もレトロ印刷の質感が好きで何度も利用してきました。ここからは過去の実例を一つずつ解説していきます。

2020年 寒中見舞い

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用紙:(厚紙)ねずみ
インク:白、緑、蛍光ピンク

レトロ印刷では様々な色、質感の紙を扱っているので(紹介ページどんな紙を選ぶかもポイントとなります。
この時はまず冬の寒々しさを表現したく、ねずみというボール紙のような紙に白インクで印刷したい。というところからスタートしました。
図案は椿を採用。葉の色と文字色を同じにする事で統一感&インクの色数を抑えました。花の色は蛍光ピンク。いわゆるよりもクールな画面に馴染むかなと考え選択しました。

寒中見舞い

通常、薄い色から順に刷るそうです。よく見ると「白→蛍光ピンク→緑」の順番で刷られている事がわかります。濃い緑でも、下の白やピンクはうっすら透けています。この透ける特性を利用し「黄+青=緑」のような混色効果を狙えるのもレトロ印刷の特徴です。

(追記)「『紙:ねずみ インク:白』は、しっかり図案を見せたい場合には不向き」という旨のツイートをJAMさんアカウントがされていました。私の場合はあくまで背景モチーフだったので理解した上で使用しましたが、見本画像の通り薄く印刷されますのでご注意ください。

2018年 年賀状

2018年賀状_1
2018年賀状_2

用紙:(厚紙)しろ
インク:赤、金

この時は「めでたい"金"を使ってみたい」というところからスタートしました。画像から伝わるでしょうか?華やかさがぐっとUPします。ちなみに金は他インクよりも擦れに弱く色移りしやすいので注意が必要とのことです。とはいえ、この年賀状は普通に取り扱っている範囲では特にストレスを感じる事はありませんでした。

studio Fuu ショップカード

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※現在、上記記載の住所では営業をされていませんのでご注意ください

用紙:(厚紙)モダンクラフト
インク:表面/白、青 裏面/白、青、黒

ピラティススタジオのショップカード。オーナーさんの「チラシとショップカードを兼ねた物にしたい」というオーダーの元、制作。
ロゴで使用している色と近いイメージのを採用。オフセット印刷で使用している色の再現は出来ないので、コーポレートカラーなど厳密に管理する場合は注意が必要です。はメリハリを付ける為に追加しました。

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オフセット印刷でも多少のズレは仕上がりの計算に入れる必要がありますが、レトロ印刷は更に大きくズレます。なのでこのような裁ち落としとの兼ね合いがシビアなデザインは避けるか、そのズレをあえて楽しむか。今回の場合はおおらかなオーナーさんが問題無し!と受け入れてくださったので、このデザインで進行しました。

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裏面には写真をキリヌキでレイアウトしました。色味のある用紙にまず白ベタを刷り、その上に青で写真を刷る事で、よりハッキリと写真を見せる事が出来ました。

たまの映画 メッセージカード

たまの映画_1

用紙:(ペラ紙)ホワイト
インク:両面ともに赤

たまの映画」の顛末についてはこちらをどうぞ。
この映画は公開初日が12月25日のクリスマス&年明け初日が1月3日だったので「ご来場の方にお礼と映画に込めたメッセージをお伝えしよう」と、映画館にて配布しました。
予算をかけられる物ではないので、一番ベーシックな薄いペラ紙ホワイト(いわゆるコピー用紙)に両面赤1色。こういったシンプルなアイテムこそ、レトロ印刷による存在感の補強が効くと思います。

「つづくこと つづくとこ」刊行記念展示 リーフレット

つづく_1

用紙:(ペラ紙)ハトロン紙
インク:表面/水、黄 裏面/水

「つづくこと つづくとこ」は元たまの滝本晃司さんの詩にMurgraphさんの絵を合わせた、詩画集のようなビジュアルブックです。(こちらについてもいつか記録をまとめたい…)
Murgraphさんの原画展会場で配布するリーフレットを作成しました。色鮮やかな原画をレトロ印刷で再現するのは不可能。限られた色で世界観を踏襲するなら…と、本のキーワードの一つである「空」を連想する水色と、その反対色であり、表紙にも採用されているひまわりを連想する黄色で、本の儚い世界観を演出しました。

つづく_2

ハトロン紙とは、表と裏とでツルツル面とザラザラ面の異なる質感を持つ、透け感のある紙。お菓子の包装紙によくある感じ…と言えばイメージが掴みやすいでしょうか。同じ図案でもこの紙に刷る事で可愛い紙モノとしてのランクがUPするにくい紙です。
今回は二つ折りの外面をツルツルにして手に取った時の印象を強くし、文字のみの中面をザラザラにしました。

「JAM置き」で作例を見よう

以上、私の制作物を紹介させて頂きましたが「レトロ印刷の特性を存分に生かしきれているか」という点では、正直言って、まだまだ修行が必要!と感じています。インクの混色をもっと使いこなしたいところ。
レトロ印刷JAMさんでは「JAM置き」として、制作者さんから了承を得た印刷物を店頭やWeb上にて紹介しています(インスタグラム/JAM置きアカウント)。ぜひいろんな作例を見てレトロ印刷の特性を使いこなし、素敵な印刷物を作ってみてください!

graphic designer
kishiko oomi
http://k-oomi.com

※関連書籍も発売されています


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