公認会計士&税理士を目指す大学新入生の方々へ~その1

はじめに

大学新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
志望校にご入学する方も、不本意ながら入学する方もいらっしゃると思いますが、ご自身でつかみ取った進路ですから胸を張って大学生活を楽しんで頂きたいなと思います。
新入生の方々の中には、将来は公認会計士や税理士になろうとお考えの方もいらっしゃると思います。
およそ30年前に同じ考えであった私から僭越ながらアドバイスを差し上げたいと思います。
私は税理士で、公認会計士ではないのですが、まあ隣接業界ってことで公認会計士&税理士という書き方にさせて頂きました。

公認会計士か税理士か

公認会計士を目指してください。将来的には税理士業をやりたいと思っていたとしても、公認会計士を目指しましょう。(公認会計士業務と税理士業務の違いはググってください。)
理由は3つあります。

理由1.公認会計士は税理士になれる

公認会計士は税理士登録をすることが可能です。
公認会計士は将来的に公認会計士・税理士という肩書を持つことが可能です。税理士は税理士だけです。
せっかくなのでどうせ勉強するなら公認会計士を目指しておきなさいってことになります。

理由2.在学中に合格できるのは公認会計士試験である

公認会計士は税理士試験と比較し、短時間で合格できる試験です。
難易度で言えば公認会計士試験の方が高いですが、公認会計士試験の方が大量の勉強時間は必要としつつ、税理士試験と比べれば短期間で合格できるんです。
その理由は税理士試験の科目合格制です。税理士試験は、11科目の中から5科目に一生のうちに合格すればいいという制度になっています。
科目合格制だから計画的に勉強できる!、学校、遊び、バイト(社会人になると仕事も)との両立ができる!、という理由で踏み込みやすい資格でもあります。
が、これが各科目の血みどろの争いを生んでいます。
資格はできれば在学中に取ったほうが後々楽です。税理士試験は科目合格制で、例えば法人税法だけに命を懸ける人が存在しますから、各科目のレベルがとても高いんです。在学中に5科目合格することは不可能ではないですが、ほとんどいないです。
令和5年の税理士試験では、大学在学中に5科目合格を果たした人は4人です。一方、公認会計士の在学中合格を果たした人は652人です。

【公認会計士と税理士の合格者調べ】
税理士合格者調べ(令和5年度・国税庁発表資料)
公認会計士合格者調べ(令和5年度・監査審査会資料)

ずいぶんな差があります。
そして、税理士試験に在学中に合格した人の勉強量は、おそらく公認会計士試験に在学中に合格した人より多いと思います。税理士試験は暗記がかなりの要素を占めます。しかも、なんとなく暗記じゃなくて完璧に暗記するんです。大げさ(大げさでもないかもだけど)に言ってしまうと、じゃあとりあえず「吾輩は猫である」を全部暗記してきてください~、みたいなことが平気であり得ると思っていただくとイメージしやすいんじゃないかなと思います。あらすじの把握ではありません。全文の暗記です。なので時間がかかるんです。
在学中に税理士試験に合格しようと思っている方は迷わず公認会計士試験を狙うべきです。(労力は同じ)

理由3.公認会計士試験から税理士試験にはピボットできる

これは、在学中に公認会計士に合格できなかった場合の話です。
在学中の公認会計士試験合格を志しても、全員が在学中に合格することはありません。従って、公認会計士試験に在学中合格ができなかった場合の代替プランを考えておく必要があります。
シンプルには大学を卒業してから専念する方法があります。あえて留年し、大学に残って公認会計士試験を続ける方法もあると思います。新卒カードを残しておくというか。(日本の就職は、新卒が圧倒的に有利ゆえ)
もちろん、普通に就職する手もあると思います。
働きながら公認会計士試験にチャレンジを続けるわけですね。
でも、これは極めて厳しい。
いくら日本企業の就業がホワイト化しているとはいえ、フルタイムで働きながら資格試験の勉強をするっていうのはかなり困難なことです。となれば、資格試験の中でもかなりの難関である公認会計士試験を諦める必要もあります。その時に浮上してくるのが税理士試験へのピボットです。
前述しましたが、税理士試験は科目合格制で、人生のうちに5科目合格すればOKです。公認会計士試験の勉強を頑張っていれば、税理士試験5科目のうち、2科目は合格レベルに達します。
その2科目は簿記論と財務諸表論です。公認会計士試験と傾向は異なりますから、対策なしに受験していきなり合格というのは難しいですが、ちょっと過去問題を解き、ちょっと調整をすれば勝負できます。(難易度は決して低くないです)
これで2科目は合格。
残り3科目ですが、税理士試験は科目合格制ですから、働きながら目指すことが可能です。残り3科目は税法です。具体的には、法人税法、所得税法、消費税法、酒税法、相続税法、住民税、事業税、固定資産税、国税徴収法の9科目から3科目をチョイスし、合格を目指すことになります。なお、法人税法か所得税法は選択必修科目になっていて、いずれかには合格しなければなりません。
ちなみに、税法のうち1科目に合格すれば残り2科目は法学(ロースクールではない)の大学院を修了すれば免除されます。
社会人向けの大学院はたくさんありますので、働きながらでも十分に税理士は目指せるということになります。
公認会計士はまとまった時間が必要ですから社会人でゼロから目指すは極めて難しいと思います。税理士は科目合格制ゆえ、社会人になってもまあなんとかなる資格です。
従って、大学生のうちは公認会計士を目指せということになります。

まとめ~公認会計士、税理士は滅びない

公認会計士や税理士は昔と比べるととても人気がなくなりました。
私の知る限り、もう30年も前(30年前というのはWindows95が世に出て、コンピュータがいわゆるパソコン、パーソナルコンピュータがまさに読んで字の如く一人一台の体制が整ったころ)から言われ続けています。
パソコンがない時代、基本的には帳簿を手書きで付けていました。パソコンの出現により、PCが代替するようになりました。ここら辺から、公認会計士や税理士は将来いなくなると言われ始めました。
さらに、RPA、AIの出現により、公認会計士、税理士は消えるとより言われるようになりました。
これは一部合っていて、一部間違えていると思います。
少なくとも公認会計士や税理士が消えると30年間言われ続けてきてまだ消えません。これは、世間が公認会計士や税理士は事務仕事をしているだけだと思っているからです。確かに事務しかやらない公認会計士や税理士は消え去ると思います。ところが、公認会計士や税理士の仕事は今や事務がメインではありません。(事務をメインにやってるところも多々ありますが、やはり縮小傾向です。)
会計や税務、また、それを取り巻く企業再編、海外取引、M&Aなどなどなどなどは非常にカオスです。また、これらすべての論点をAIをぶち込むには市場規模が小さすぎます。100年後はわかりませんが、少なくともあと数十年はこのカオスを生成AIに学習させる作業は後回しになると思います。
さらには経理、財務の人材が激減しました。
これは、公認会計士や税理士の人気減に連動していると考えています。
仮に、公認会計士や税理士になれなかったとしても、非常に貴重な経理・財務人材になることができるのです。
いわば逆張り戦略ですね。
結局、公認会計士や税理士を目指すことに損はまったくありません。
ステキな大学生活を送ってください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?