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【こんな映画でした】902.[テス]

2022年11月14日 (月曜) [テス](1979年 TESS フランス/イギリス 172分)

 ロマン・ポランスキー監督作品。この映画を観るのは二回目となる。最初は1980年10月23日、阪急会館(神戸・三宮にかつてあった映画館)での試写会で。つまり公式の公開日は二日後の「25日」とBRDの説明にある。その後42年間、観る機会がなかったということになる。

 しかし最初の印象、つまり主役テス役のナスターシャ・キンスキーの美しさだけは、その時も強烈に印象付けられ、そして今回あらためて確認したようなわけであった。撮影当時18歳である。初々しいのひと言だ。

 今回二度目とはいえ、ほぼまったく忘れていたので、ストーリーはこんな風だったのか、と。それにしてもテスは強い女性である。というか、強くならねば生きていけない状況・社会であるということだ。にもかかわらず、最後にアレックを殺害してしまうのは不可解だ。他のやり方でそこから逃げ出す方法はあったろうに。

 考えようによっては19世紀後半のイギリス社会で、このような女性が社会的に許容・認知されるわけがなく、最終的に死なせる(絞首刑)しかなかったのかもしれない。それが限界だろう。もとからハッピーエンドになるような甘い社会ではないのだから。

 下層階級の人々の労働を見ていると、本当に劣悪・苛酷なものである。人間扱いされてないと言っても間違いない。そのような中で強かに生きていくしかない農民たち・庶民たちは、今の私たちのようなヤワな存在ではないとは思うが。

 貴族層による収奪が当たり前の社会は、歴史の一段階という当然のことながら、見ていて嫌になるものだ。そういう意味では、今はましな世の中になっていっているのかもしれない。

 今の社会からこの内容をとやかく言うのはお門違いかもしれないが、例えばエンジェルがテスを捨てて立ち去るのだが、いずれ帰ってくると言いながらも、その間の生活費というか、その手当もせずにいくなど論外だ。結局、強い女性であったはずのテスも、このエンジェルの裏切りによって、ついに挫折してまうのだった。つまりアレックに屈してしまうわけだ。その時点でテスの人生はもう終わっていたと言えるだろう。

 しかし、今一度エンジェルが訪れてくる。「Too late」と何度も繰り返しエンジェルに言うテスであったが、再び気持ちが戻ってしまったのだろう。で、やみくもにアレックのもとを立ち去ろうとしての凶行ということになるのかもしれない。もはやその時のテスは、昔の強く理性的なテスではなかったということだろう。そして、悲劇となるのだ。

 とまれ、若い頃といってももう30歳であったが、その時の私はナスターシャ・キンスキーの美しさのみに目を引かれ、この映画の背景などには目を向ける余裕がなかったのかもしれない。このような結末しかあり得なかったのかと思うと胸が苦しくなる。もちろんフィクションなのではあるが。

2022年11月15日 (火曜) メイキングを観る。撮影には約八ヶ月。ナスターシャ・キンスキーは17歳から18歳だったそうだ。

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