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【こんな映画でした】787.[サンシャイン・ステイト]

2022年 8月 9日 (火曜) [サンシャイン・ステイト](2002年 SUNSHINE STATE アメリカ 141分)

 ジョン・セイルズ監督作品。これで三作目となる。原題はフロリダ州を指すようだ。あるビーチ、それも黒人たちが苦労して住み続け、作り上げてきたビーチと町が舞台。時の流れとともに寂れていくのは、いずこも同じ。そこに開発業者が現れて、という話が基本となる。それに女性三人の人生が絡む。

 まずデズリー役のアンジェラ・バセット(撮影当時43歳)、彼女は15歳で妊娠し、故郷にいられなくなり出奔。この程久しぶり(二十数年ぶりか)に母親の元へパートナーとともにやって来る。なお彼女の出演作では[F/X 引き裂かれたトリック](1986)を観ている。

 二人目は地元で父親の経営していたモーテルとレストランを引き継ぐマーリー役をイーディ・ファルコ(撮影当時38歳)、主にテレビに出演のようで初めて観る。この二人が主に話を展開していくことになる。

 なお三人目はやはり地元の有力者の妻フランシーヌ役のメアリー・スティーンバージェン(撮影当時48歳)、翌年の同監督の映画[カーサ・エスペランサ ~赤ちゃんたちの家~]を観ている。調べてみると何と[八月の鯨]にも[ギルバート・グレイプ]にも出演していて、観ていたようだ。

 さらに言うならデズリーの母親(メアリー・アリス、撮影当時65歳)と、マーリーの母親(ジェーン・アレクサンダー、撮影当時62歳、1976年の[大統領の陰謀]で観ているようだ)もなかなか魅力的である。なおメアリー・アリスは去る7月27日に亡くなったとのこと。

 様々なエピソードを組み込み、輻輳的に物語は展開する。もっともやや詰め込みすぎの感がないでもない。偉そうにいうが、カットしてもいいと思ったシーンがいくつかあった(例えばマーリーと前夫とのお金儲けに関するやりとり)。

 世の中のことを表現していくには、そのように様々なエピソードを積み重ねていくやり方は効果的だろう。観客はやや大変ではあるが。そして現代世界の、というオーバーではあるが、問題を摘出していく。解決方法はそれぞれが考えていくしかない。オールマイティのやり方があるわけではない。

 最終的に、開発はストップするのだが、その切っ掛けは予定地をショベルカーで掘削していたら人骨が多数出てきたことによる。先住民の骨だということで、遺跡としての価値があると専門家が言う。もっとも彼ら先住民はそこにやってきたヨーロッパ人たちによって虐殺され、埋葬されたものらしいのだが。

 とまれ開発の件は落着し、開発業者たちは町から去って行く。残された人々にはまたいつも通りの日常が戻ることになるのだろう。だが、人の心はもう元に戻ることはないだろう。つまり開発されずにすんでホッとした人、折角それ相応の値段で家が売れると期待したもののぽしゃってしまった人、それらの騒ぎとはまったく関係なく生活している人、といった具合である。この先この三人の女性たちは、どのように生きていくのだろうか。少なくともデズリーは夫の元へ帰ってはいくことだろう。年老いてきた母親との関係はどうなるか。

 マーリーは、父親からもうモーテルとレストランを売ってもいいと許しを得ている。ともかくそのような桎梏から逃げ出したいのだろう。売ってどこかへ行ってしまうのだろうか。

 フランシーヌは夫婦の危機を乗り越えられるのだろうか。もっとも本人は、夫が自殺まで考えるほど深刻であることに気がついてないのだが。難しいものだ。

 なおオープニングシーンとラストシーンは、ともに地元のゴルフ場である。男たち数人が、金儲けの話などをしながらゴルフをしている。象徴的である。

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