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【こんな映画でした】696.[ロング・エンゲージメント]

 ジャン=ピエール・ジュネ監督作品。初めて。オドレイ・トトゥ主演(マチルダ役)。恋人役のマネクにギャスパー・ウリエル。何とジョディ・フォスターが出ていた。DVDのクレジットになかったので知らなかったが、途中からの登場にこれはどう見ても彼女だろう、と。エンドロールにはちゃんと出ていた。

 読んではいたが、ヨーロッパの人たちにとって第一次世界大戦(ここではフランス人とドイツ人との戦いである)というのは本当に重いものであったようだ。今作はまさしくそれを描いている。

 オープニングシーンは塹壕の列なる戦場であり、拘束されて引き連れられてくる兵士五人は自傷行為とみなされ、軍法会議で死刑宣告を受けた人たちなのだ。

 その五人の一人一人について銃後での生活の一端と、ここでの自傷行為の実際が順次描かれていく。日本の軍隊でもあったので知ってはいたが、その自傷行為の実際を映像で見せるとは凄いことだ。

 そして彼らは死刑執行を、つまり銃殺刑とされるのではなく、自陣から追い出され敵兵の側、つまりドイツ軍だが、そちらの方に追いやられ撃たれて死ぬようになっているのだ。弾薬の節約かもしれないが酷いものである。

 その五人のうちの一人がマチルダの恋人マネクというわけである。その自傷の仕方は、夜タバコの火を付け、それを持った右手を塹壕から上に突き出して、ドイツ軍の狙撃兵に狙わせるわけである。

 1920年、戦争が終わっても帰ってこないマネクを探すために、マチルダは私立探偵を雇うことに。ここからミステリータッチで探索が始まる。順次、関係者を訪れ、一つ一つ検証していくのだ。そして最後の最後に行き着くことにはなるのだが。

 ある程度予測されるわけだが、マネクは負傷して記憶喪失となり生きていたわけだ。名前も何も分からないので、故郷に残してきた恋人のことも忘れていたということに。こういう事例は結構あったのではないか。

 虚構だけでは、人々の共感を得ることはできないだろう。第一次世界大戦というのが、彼らにとって非情なトラウマになっているということ。これは本を読んでいるだけでは分からないだろう。というか、私はこれまでそれを知らなかった。

 ヨーロッパの歴史や人々のことを知るためには、この第一次世界大戦というものをもっと知る必要があるようだ。見終わって、監督による音声解説版で少し観たが、原作に基づいて作っているとのことであった。

 原題はフランス語では「DE FIANCAILLES」が「婚約指輪」ということらしい。擬人法で「婚約指輪の長い日曜日」ということかもしれない。英語では単に「とても長い婚約期間」ということか。


2021年12月22日 (水曜) [ロング・エンゲージメント](2004年 UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES A VERY LONG ENGAGEMENT フランス 134分)音声解説版

 何回かに分けて監督による音声解説版を観た。やはりよく考えているものだ。あるいは特殊撮影のこととか、俳優個人のこと、資金のこと等々。やはり映画の道に進みたい人には、このような音声解説版は必見だろう。

 中で監督が何度か、このシーンはメイキングで観てほしいと言っていた。あいにくこのDVDはレンタル版だったので、それがなかった。近々、手に入れて、観てみようと思っている。それにしても何度も思い知らされるのは、ヨーロッパにおける第一次世界大戦の無惨さだ。

2022年 3月 2日 (水曜) [ロング・エンゲージメント](2004年 UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES A VERY LONG ENGAGEMENT フランス 134分)メイキング

 2021年11月30日 (火曜)に観たが、その後監督による音声解説版を観、そして二枚組のDVDを手に入れ、その二枚目のメイキングを観た。映画作りの舞台裏が分かるので、その方面に進みたい人には勉強になるだろう。

 第一次世界大戦の塹壕などを再現しているが、まさに塹壕こそが第一次世界大戦を象徴するものであろう。どれほど劣悪な酷い環境であったかの、一端が知れる。そして世界大戦というものの無惨さも。

 映画作りには、お金と時間が掛かるのが分かる。もっとも今はコンピュータによる映像処理ができるので、その点では飛躍的な進歩というべきか。基本である当時の服装や持ち物、風景などを最大限再現していく作業は大変だが、歴史の記録としても意味のあることだろう。

 いずれにせよフランスにとっても、第一次世界大戦は悲惨な記憶なのだろう。なおマリク役のギャスパー・ウリエルが今年一月に37歳で亡くなっているのは惜しまれる。スキー中での事故とのこと。

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