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【こんな映画でした】731.[小説家を見つけたら]

2021年10月13日 (水曜) [小説家を見つけたら](2000年 FINDING FORRESTER アメリカ 136分)

 ガス・ヴァン・サント監督作品。作家フォレスターをショーン・コネリー。ジャマール・ウォレス役をロブ・ブラウン。嫌味な教師に[アマデウス]のサリエリ役F・マーレイ・エイブラハム。

 これは佳作であった。良い映画が埋もれていた感じ。もちろん私が知らなかっただけだが(もっとも聞いたことはある気がする)。作家だけあって、文章を書く極意をチラッと教えてくれる。

 たとえば書く時に考えてはいけない、と。スラスラと出てくるものが、いいものなのだということだろう。考えてひねり出すようなものはダメだと。そういえばモーツァルトなんかもそういう意味では何も考えることなくスーッと楽譜にしていったのだろう。そんな気がする。

 私ごときでも何も考えずに、後から後から自然に頭から出てくる文章をパソコンに打ち込んでいるように思う。それが第1稿ということになる。

 ラストシーン近くの作文コンテストにフォレスターが現れて、一文を朗読するのだが、そこには「友情」というものについて書かれていた。あらためて年齢や年齢の差にかかわらず友情というものは成立するものであり、人生にとっても大事なアイテムであることが分かる。なおこの一文の作者は誰であるか。それは終わり際に紹介されることになる。

 そしてラストはやはりフォレスターの死ということに。生者と死者とが連環していく。それが人生というものだろう。*
 それにしてもこの邦題は何なんだろう。原題はウィリアム・フォレスターという現存しながらも、市井に隠れている作家を見つけること。あるいはフォレスターという作家の持つ何かを見つけ出すこと、といったところか。

 転校した学校でのバスケットボールの練習風景で、ライバル同士の二人がフリースローの試合をするシーンがあった。なんと50回連続成功させて、終わっている。映画ということでの誇張もあるのかもしれないが、それくらいの能力・実力がなければダメだということだろう。

 意地悪な教師クロフォードについて、ジャマールにその対応で良かったとアドバイスする学生としてコールリッジが出てくる。それが伏線となるのは、この教師が実に意地悪なのだがあの有名な詩人コールリッジの詩を黒板に書いておき、それについて生徒のコールリッジにいろいろと尋ねるのだ。最後に誰が書いたものか、と。

 あいにく彼は同姓の詩人の詩を読んでおらず、答えられない。教師は何度か「ミスター・コールリッジ」と呼びかけて(いたぶって)問いを続ける。ついに彼の後ろにいたジャマールがこそっと「自分の名前を言え」、と。

 ここから教師とジャマールのやりとりがあり、教師は腹を立て、教室から出て行けと命じる。これが最後までかかわってきて、試合の最後のフリースロー二本をわざと外すということになる。

 クロフォードは作文指導だが、実はこの映画のとおり小説家になれなかった人なのだ。だから生徒が上手な文章を書いてきても、それを受け入れることができない。剽窃ではないかとまず疑うのだ。だから一度はジャマールに自分の目の前で書くようにと強要している。もちろん彼は書けなかったようだが。

 とまれショーン・コネリーが格好良く演じている映画であり、映画は初めてというロブ・ブラウンが良かった。

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