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デザインはみんなのものだ。

日本人、日本文化には、たぶん世界を良くするデザインができるポテンシャルが大いにあると思います。

一回日本を離れて外で長く暮らして戻ってくると、余計にそう感じます。日本の中に居たときには気づかなかった、とてつもなく深く細やかでやさしい、「ひとを中心に、でも環境とも調和する」こころがけ、のようなものが日本文化にはあるような気がします。

大切な友人のひとり、石川俊祐さんが本を出しました。
タイトルは、「HELLO, DESIGN 日本人とデザイン」
同じようにロンドンで長く暮らした彼が、あえて「日本人とデザイン」というタイトルをつけたのは、きっと同じような思いをもっていたんだろうなと想像しながら一気に読みました。

石川俊祐が誰なのか知らない人も多いかもなので、ちょっとだけ補足すると、「デザイン思考」とか「Design Thinking」とか、ここ数年色んなところで耳にしたことがあるかもしれませんが、彼はそれのプロです。
大げさではなく、彼は日本人の中で、間違いなくもっともデザイン思考を実践してきた人のうちのひとりだと思います。

実践に基づいているものだから、言葉ひとつひとつの説得力がすごいんですが、さすがデザイナーだなあと思うのは、それをホントにわかりやすく噛み砕いた言葉で説明してくれているところでした。すぐれたデザインには無駄がないって言いますもんね。

「優れたデザイナー」になるために必要な条件があるとしたら、(中略)「自分の主観に自信を持っていること」。

印象に残ったのがこの言葉。「自分の主観に自信を持っている」って言っても、エゴイストになれっていうことじゃないですよ。

自分自身に価値観の軸をしっかり持っていること、そしてそれは社会にとって良きことであると信じる信念をもつべきだということですね。その信念に基づいてデザインすれば、かならず共感を生み、結果社会を変えていくことができると。

ウォルト・ディズニーでもジェフ・ベゾスでも、結局最初に自分自身の中にあった価値観を信じて周りを動かしていった結果、社会に新しい価値を生みだしたわけですしね。

ちょっと話がそれるかもしれないけど、ぼくはどんなクリエイティブな仕事も、大前提として人を信じるところからスタートしないといけないと思っています。例えば映画でも文章でも音楽でもプロダクトでも、作ったものを世の中に出して、それを受け止める誰かがきっとわかってくれると信じるわけです。受け手にはこちらが提示する価値観を理解するモノサシがきっとあるはずだ、という前提がないとコンテンツを介した間接的なコミュニケーションは成立しないからです。

人のモノサシを信頼するために必要なことはなにか、それは人がどんなモノサシを持っているのかを想像することで、その想像の根拠になるのは実は結局自分自身の中にある自分のモノサシだったりするのです。だから石川さんがここで言ってる「自分の主観に自信を持て」という言葉にはそういう意味で通じ合うものがあると感じています。

こどものころ、「自分がされたら嫌なことは、ひとにもしちゃいけないよ」と言われたことありますよね。でもその逆に「自分がされて嬉しい・楽しいことは、ひとにもどんどんしていきましょう」ということも言えるわけですよね。自分の心はどんなときに、どういう風に動くのか? 自分は何が好きで、何に惹かれるのか? そうやって自分の主観をもう一度見つめ直してみること、そこから始めれば、実はみんな「デザイン」できるポテンシャルがあるというわけです。

自分と他人の両方をよく考えて、想像力を働かせて、思いやって先回りして、相手の表情を想像しながら何かを考えたり作ったりする。これはホントに日本の人はたぶんDNAレベルでできるやつですよね。

自分の「好き」を探して、そのモノサシを各自が自覚できるようになること。このシンプルな心がけをすれば、どんな人だって、豊かな世の中をいっしょに「デザイン」していくことができる。「デザイン思考」を習得して経営をアップデートする。とか、うやうやしく担ぎ上げるんじゃなくって、みんな自分自身の中にある自分の「好き」のモノサシに「ハロー!」ってすればいいんですよ、というやさしいメッセージが込められた本だと思いました。

「HELLO, DESIGN 日本人とデザイン」

面白く読みましたよ。俊くんありがとう!


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