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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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#古道具

秋のブーケ 私の花仕事

私が、もうかれこれ13年もの間、担当している花の仕事がある。 花の通販サイト『花問屋アソシエ』さんでの『花レシピ』の製作と撮影。『うきうき花レシピ』という、気分も揚る名前をいただいている。 毎月一回、季節の花の紹介とそれを使った作品を製作し、撮影する。 事前にデザインを決めて、花材を発注。 当日は丸一日かけて8作品程度製作しながら工程を撮影していく。 今年からは動画撮影も加わり、どうお見せしたらいいいか工夫しながら、スタッフ皆で試行錯誤しながら進めている。 特に、プロのカメ

初秋の草花 屁糞葛、杜鵑草、鳥兜、犬蓼

お盆過ぎから9月中旬までは、身の回りに咲いている花もあまりなく、いつも花を飾っているスペースは長い間がらんとしている。 庭を巡って目を凝らして見つけられるのは、屁糞葛(ヘクソカズラ)、杜鵑草(ホトトギス)、犬蓼、水引草など。 決して目立たないけど可憐な小さな草花たちだ。 まず、屁糞葛。 可愛いお花なのに可哀想なお名前。 初夏の草刈りシーズンでは、庭を覆い尽くし、屁糞葛の蔓と綱引きになるのだけれど、その名の通り、葉や茎から出る悪臭で思わず手を離したくなる。 しかし、晩秋。

冬のクレマチス

先週の雪は、翌日あっという間に消えた。 その後、雪のような白いベルが一斉に開花し始めた。 冬に咲くクレマチス、クレマチス・アンスンエンシス。 別名ウインターベルだ。 蔓の節ごとに仲良く2つのコロンコロンとした花をつけている。 北風に共鳴し合う無数のベルたち。 クレマチスが好きで、数年前から育てていたものの、上手く花を咲かせられなかった。 冬のお散歩コース、他のお宅のフェンスにたくさん花を咲かせているのを見るにつけ、とても羨ましかった。 昨年の夏は、なるべく直射日光に長く

凛とした佇まい 日本水仙

友人の古民家、庭先の水仙。 まずは水色の空き瓶にすうっと一本、納屋の片隅にいけてみた。 この「すうっと一本」が、一月のイメージ。 年末からお正月の賑わいも過ぎ、冬の静けさが訪れる一月。 別名「雪中花」とも言われるように、凍えるような大地を割って、ゆっくりと花芽を伸ばし、花を咲かせる。柔らかな茎や葉からは想像できない、強い生命力を感じる。 花の大きさや、黄色や白と『スイセン属』と言われる水仙の種類は色々。 とりわけ、柑橘系にも似た爽やかで品の良い香りと、素朴であるが凛とした

春の囁き クリスマスローズ ニゲル

『あ、花芽がついている』 12月中旬の庭仕事中に、落ち葉に埋もれた株の下に、白い蕾が少しだけ顔を覗かせていた。 作業中踏まれないように、枝の支柱で目印をつけてそっとその場を離れた。 クリスマスローズは、『ニゲル』と一般的な交配種の『オリエンタルタリス』に分かれ、早咲きのニゲルは、その名の通りクリスマスの頃に咲き始める。クリスマスローズ・ニゲルは(ヘレボルス・ニゲルの英名)だそう。 真冬に咲き始めるニゲルは、透け感のあるオリエンタリスの花弁に比べてやや肉厚。 また、俯き加減の

1月の古民家だより 冬イチゴ

『ほら、冬イチゴ。』 暮の戸外での昼食準備中、古民家に住む友人が、庭から摘んできた野苺を片手に、『焚き火も用意できたから』と台所に戻ってきた。 小さな実を枝からそっと外し、冷蔵庫からバター、フライパンをガスにかけ、手際良くあっという間に『甘酸っぱい苺ソース』の完成。 『炭火焼の鴨に合うんじゃないかな。』 その苺は、外のテーブル脇の石垣に生えていた。 それは、ひっそりと葉っぱの下に隠れながら蔓の先に小さな実をたわわにつけていた。 陽にかざすと透き通るような美しい赤。 『器に