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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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2022年8月の記事一覧

初秋の仙人草

暑さも和らいで、ほっと一息。 気がつけば、街路樹や野山の景色も少しづつ変わっていた。 山道を運転しながらそろそろかなあ、とよく見てみると木の枝に所々白いふわふわとした雲のようなものがが載っている。 仙人草だ。 仙人草は、クレマチスの一種で、別名『ウマクワズ』とも言われる。 こんなに可憐で素敵な花なのに茎や葉の汁に毒があるのだ。 仙人草は秋も深まる頃になると、こんな風に種がはじけて、まさしく仙人のような髭を出す。 仙人草の近似種で『ボタンヅル』というものがある。 茎も仙人草

晩夏の向日葵

お盆を境に空気が一変した。 連続した猛暑日も終わり、時折小雨も混じる不安定な初秋。 雨の中も最後の命を振り絞るように鳴いている蝉が物悲しい。 映画『ひまわり』、ツールドフランスの沿道の『ひまわり』。 どこまでも続く向日葵畑。 路地や畑の脇に咲く一本の大きな向日葵。 向日葵の花が夏の象徴であると共に誰もの心に残るのは、人ほどほどの背丈と丸い花が、人型のように見えるからかもしれない。 随分大人になった今、燦々と夏の陽を浴びる向日葵よりも、初秋の枯れ始めた種になりかけの向日葵が

儚い夏の花 芙蓉、木槿、葵

連日の猛暑の後、ついにお盆に台風。 夏が嫌いで辛い毎日だったが、クリスマスの頃の冬の空気を想像しながら、きっといつかは終わると信じて2週間過ごしてきた。 こんな夏の中にも元気な花はある。 英名でハイビスカスに属する芙蓉、木槿、葵だ。 花型と花芯の形がそっくりなので、葉を見ないとわかりにくい。 また、朝咲いて夕方には閉じる一日花。露草も一日花。 過酷な日差しにも負けずに咲いた分、夏の命は儚いもかもしれない。 まずは、酔芙蓉。 葉が木槿に比べて大きく、手を広げたよう。 この

夏の百合 その場所で咲くこと

先週のお稽古で使った向日葵は、やはりこの猛暑であっという間に枯れてしまった。いけられた花は、夏は特に長持ちしない。 これまで季節がなんであれ、花をいけることを当たり前に続けてきた。 しかしこの数年、植物の自然環境下での生き生きとした姿、在り方を注意して見つめるようになり、その面白さに惹かれるようになった。 最近は、生産された花をデザインしていけることが少し辛くなることがある。 ただ、美しいという花よりも、それぞれの環境下での『姿や在り方』を見つめる方が愉しい。 山百合。

夏色の伊豆旅

昨日の仕事の疲れを引き摺ったまま、車に乗り込む。 元気すぎるラジオDJがやや耳障り。そんなに朝から頑張らなくても、と思う。クラシックが聴きたいが、わざわざオーディオを操作する意欲も無い。箱根越え後、三島の街が一望に見下ろせる頃、ようやくじんわり意識が戻ってくるのがわかった。低体温低血圧気味だからよくある事だ。 いつも友人の下田の家へは、東伊豆から向かうが、今日は友人の家を訪ねる前に、西伊豆で一つ目的があった。 まずは一息、月ヶ瀬ICに寄る。 駐車した隣のワゴンには、浮き輪