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(再掲)非らぬ人たち 『詩集 葦船』より

来る人は来る 残った人が残る

だから無視している訳ではない、と

すでに招待状を開いた あなた方の高笑いが騙る

手を引く母 新聞を取っている父

踊りと作法の遺産で飾り立てて臨むそこの子供

カトラリーに映る顔は 封を切るナイフを使えない 

招待状ごと破ってしまう手を見たことがあるのか

アフリカの露店で買ったというペンキ絵を見上げ、ほくそ笑んだ

大きな鳥が蛙に喉を絞められて涙目

蛙の頭はすでに鳥の喉に入ってる

吐かない鳥に放さない蛙

Never give up. と 絵師が添えた一筆がある

来る人は来る 残った人が残る

だから無視している訳ではない、と

盛りの鳴き声のような嬌声が騙る

鳥にはなってみたい、だから

過去を全て蛙に代えよう

私のことを忘れたら 迷わず喉を絞めてやる

首に痣をつけられずに 今の今までゆうゆうと

群れなし途行く胴体の陰り その気配に苛立って

指を咥えようとして止めて

翼がペンにされるのを念じた

アフリカの露店で決められなかったという土産物が惜しい

ガゼルの彫刻をあしらった本立てに焦がれてる

日に焼けた見本の聖典を駆け上がってたらしい

櫛の歯みたいな鍵盤を 親指で爪弾くんだって

目の前でグランドピアノの蓋が開いたら

タップシューズの踵を割った

スラックスの折り目を引き裂いて踝を探り 

足首に鈴を結んで途立つ


※追伸

SNSを続けるのって エンドレスな飲み会の幹事のようだ

FMラジオから流れて来た公演の告知は 小学校の教室で聞こえて来たお誕生日会の招集のようだ

賞状を堂々と飾れる人が羨ましくて

自慢をしてはいけないと、

謙虚と卑屈のラインを教えられなかった親が憎かった

なかなか開けずにいた本をやっと開いて、ゲミュートというドイツ語を覚えた

心、情緒という意味だった

まるでアゲート、瑪瑙のように

心を検品したり加工したり

そうできることが望まれているような錯覚を起こすほど、似ていた

奇しくもアゲートは脳に似ている

扁桃体はあって当たり前だから省略されている

みんなはまるで医者のように 私を見て

恣意的に作られた問診票に従い 友達がやってる居酒屋でカンファレンスを開いて乳くり合った

皿洗いのバイトに軽蔑されても気づかない

言いつけられても聞こえない

存在を無視するのが当然だからだ

頂いたサポートは、本代やフィールドワークの交通費にしたいと思います。よろしくお願いします🙇⤵️