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詩集 葦船

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あしふね、と読みます。全8作からなります。 写真素材:ぱくたそ 写真撮影:にっしーな
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#文学

【詩】心細し

うらぐわし、と口ずさむ 手櫛ですかれる御髪の画が現れる やはり長く 黒く 細い 柔い髪だ…

木勢佐雪
5年前
13

【詩】疎外と疎外感

疎外されている状態と 疎外されているという感覚 勝ったか負けたか相場もわからぬ子供の遊び…

木勢佐雪
5年前
11

【詩】追懷

黄揚羽が肩口から躍り出て 襟周りを滞空する まるで胸ぐらを掴まれるようで  黄揚羽を払い…

木勢佐雪
5年前
10

【詩】蛭子

蛭子は父と母が編んでいるものを揺り籠だと思っていました 父と母が自分を入れて川にそっと下…

木勢佐雪
5年前
7

【詩】非(あら)ぬ人たち

来る人は来る 残った人が残る だから無視している訳ではない、と すでに招待状を開けた あ…

木勢佐雪
5年前
15

【詩】大童

行きたいところに行きたいと 毛先に砂がつくまで喚いたら 今いたところも取り上げられた 仕…

木勢佐雪
5年前
10

【詩】葦船(あしふね)

公立劇場の稽古場に 腐肉のついた白馬の尾を投げ込んで 俳優たちが不快げに喚いたら 大手を振ってここから逃げられる 公立劇場の舞踏公演で 手のひらを裏返して、さよならをしたら 観客たちがヒステリックに怒り狂う 私たちは穢いものとは無縁である、と 保障して欲しかったのだから 通学電車で望む山間の線路沿いに 小川と見間違う用水路が流れる 護岸に両端を打ち付けた短い鉄板の橋が渡り 山へ入る小道から 石造りの鳥居が見えた 聞き覚えのある旋律が微かにして おそら