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振り返り手を振る母に

無人になった実家の保守のために月に1週間、実家に行く生活を始めて半年。滞在中は毎日、母のいる高齢者施設に面会に行っている。ガラス越しではなく、玄関ロビーで距離を取って直接、会わせてもらえる。

レビー小体型認知症と老人性鬱と診断されている要介護2の母は、調子のいい時は言葉が出るが、ほとんど言葉が出ない日もある。表情はほとんどないが、最近、時折、笑顔の時があると教えてもらった。

今日も、うなずくか首を横に振るかで何も話さない無表情な母に、午後に東京に帰るからね、次に来るのは8月だからねと言うと、うんともいいえとも言わない。疲れたか、部屋に帰るかと聞いても動かない。

どうしたんだろう、と思っていたら、職員さんが、さびしいというお気持ちの現れなんですよとおっしゃった。

別れ際、職員さんに手を引かれ部屋へ帰る途中、何度も何度も立ち止まっては振り返り、振り返り、小さく手を振る母を見ていると涙が止まらなかった。

※写真は施設の玄関に飾られていた季節のリース

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