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【ショートショート】カミサマに祈れば

彼女は祈願上手なのだという。
「昔から【カミサマ】に祈れば何でも叶えてもらえるのよ」
本人が嬉しそうにそう言っていた。
「小さい頃にどうしても友達の飼っている犬が欲しくなって【カミサマ】に祈ったら、その友達から譲ってもらえることになったの」
(その友達は父親が事業に失敗して夜逃げ同然に転校していったという)
「大学の時の彼氏もね、もともとは友達の彼だったんだけど、一緒に遊んでいるうちに私のほうを好きになっちゃったんだって」
(その友達は大学の実験の授業中に誤って強酸を浴びてしまい顔に酷い火傷を負ってしまったという)
彼女の話を聞くたびに私はいつも思ってしまうのだ。……彼女が祈っているのは本当に【カミサマ】なのだろうか?
彼女は私の腕の中ですやすやと安らかに眠る娘に愛おしそうな視線を向ける。
「あなたの子供、女の子よね? 本当に可愛いわ。羨ましい。うちは男の子だけどもうワガママ放題で困っちゃうの。あーあ、女の子が良かったなぁ……」



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