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三十五年目のラブレター(小説)

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アールヌーヴォーの画家たちに暴かれる三十五年前の真実 「最も価値のあるものを奪ってやる」 業務上横領で逮捕された建設会社経理部長。 強制猥褻で逮捕された都議会議員。 二人のとこ…
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2024年7月の記事一覧

三十五年目のラブレター 第33話

 深沢はこんなところだったか。昨日一日来なかっただけで、別の土地のように感じる。綱島や篠…

如月芳美
8日前
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三十五年目のラブレター 第34話

 中橋邸に居た島崎に突如かかってきた吉井からの電話は、急いで宮脇邸へ行けというものだった…

如月芳美
7日前
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三十五年目のラブレター 第35話

「彼ら?」 「お父さん」  すかさず夫人が彼の袖を引っ張る。だが、彼はもう止まらなかった。…

如月芳美
7日前
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三十五年目のラブレター 第36話

 桐谷は川畑と食事をとりながら、何度も「美味しい」を連呼した。手作りの食事を温かいうちに…

如月芳美
6日前
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三十五年目のラブレター 第37話

 あなたがこの手紙を手にする時、私はもう死んでいるでしょう。それが明日なのか十年後なのか…

如月芳美
5日前
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三十五年目のラブレター 第38話

「もういいんですか」 「ああ、ありがとう。シオリさんのお陰で納得がいくまで片付けられた」 …

如月芳美
4日前
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三十五年目のラブレター 第39話

 桐谷を署へ送り届けて一段落ついたところで、島崎は川畑を家まで送るように吉井に命じられた。  吉井もそれなりに気を使ってくれたのだろう。川畑だけでなく、島崎にも、だ。  まあ尤も、島崎としては「本来なら川畑は吉井に送って欲しいんだろうな」などと派手に勘違いしたままなのではあるが。  車の助手席で、川畑はぼんやりとしたままで何も話そうとしない。余程疲れたのか、それとも桐谷と何かあったのか。 「済まなかったね……」 「ん?」 「桐谷さんの口癖。いつも二言目には『済まなかったね』っ