26歳、はじめての香水
生まれてはじめて、香水を買った。
これまでずっと気になってはいたけど、何がいいのか、何が合うのか、はたまた何が嫌な匂いじゃないのか。
買わない理由があるわけじゃないけど、買う理由も見つからない。
そんなことを考えているうちに、30歳手前になってしまっていた。
だからこそ、思い切って買ってみることにした。
ふだん行かないブランドを周り、香水専門店も周り、小さな壜ひとつの値段に驚きながら、私でも手が出せそうな香水を探していく。
柑橘系? ウッディ系? ローズ系? ブレンド?
香水はつけた直後から香りが変化していくみたいで、つける人によっても変わるらしい。
一つひとつ、服を試着するように試して、やっと気に入ったものが見つかった。
「もしよろしければ、この場でつけていかれますか?」
レジで店員さんに聞かれ、頷く。
ぷしゅっ。
手首が濡れる。それを擦った首元から、私が選んだ香りがした。
店を出ると、そよ風に吹かれて、また香る。
歳をとるだけでは、すぐに大人にはなれなかったけど、新しい香りを纏った私は、少し大人になれた気がした。
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