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読みたいことを、書けばいい。田中 泰延【読書レビュー】

                評価:★★★★★                    おススメ度:★★★★★ 

 この本のエッセンスは「自分が読んで面白くないものは人が読んでも面白くないので、自分の読みたいものを書くことが大事」というものだ。

 この本は一般的に見られる文章術のようなものが書かれているわけではなく、むしろそのような文章術を謳う本は良くないと否定的に語られている。つまり面白いのだ。私が特に強い印象を感じたのは、読まれることを前提に書くのではなく自分が楽しむために書くという著者の着眼点だ。Webライターや小説家、どんなライターだとしてもお金を稼ぐために書く、人に読んでもらうことを前提に書くことが当たり前だと思い込んでいた。しかし著者はこう語る。「自分が楽しんで書けるならそれでもいい。しかし苦悩して言葉を絞り出しても、楽しめる文章を書くことはできないだろう。」確かにその通りだ。まず自分が楽しむことを考えないと、執筆なんて苦でしかない。小学生時代に良く書かされた読書感想文。あれが好きだと言う人はいないだろう。ちなみに、上記著者の語りは、私がこの本から感じ取ったものであり、実際に書いてあるわけではない。当たり前だ。読んだ本の内容を一言一句覚えているわけがない。とにかく、大事な事は何度も書くという著者の教えを守り何度も書くが、大事なのは「自分が面白いと思うものを書く」ことだ。この本から得られる学びはそれくらだ。いや嘘だ。あと一つ特に大切な学びがある。それは、物書きは調べることが99%の仕事だということだ。著者は「物書きは[調べる]が9割9部5厘6毛」などとかっこつけて書いているが、辞めてくれ。分かりづらいのだ。数字でいいだろう。ということで勝手に99%とする。第3章に書かれていた内容なのだが、特に大切なのは一次資料に当たることだ。一次資料とは簡単に言うと、誰かの執筆の文末に書かれる脚注、参考資料のようなものだ。どんな文章や映画作品にもインスピレーションを受けた過去の作品、参考にしている執筆や事象などがある。その資料を探し求めることが大切だということだ。言葉とは文字通り「葉っぱ」である。その言葉が出てくるにあたっての「根っこ」を探し解明すること。これが面白いものを書くための基礎になるのだと語る。どうだろうか。そもそも一次資料を見つけるのに手間がかかるのに、書くことを仕事にしてしまっている人にはなかなか厳しいのではないか。かなり時間を要するので、必ずやるべきだとは思えないが、できる限り一次資料は探したほうがよいだろうと私は感じる。ここまで長々と語ってきたが、この本の評価は親切にも★で評価されているし、文頭にも書かれている。わざわざ最後まで読む必要はない。時間の無駄だ。なぜならこれは私が楽しむために書いているのだから。

 本の特徴としては、4部構成で分かりやすい。以上。

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