技能・領域は「統合的に」指導すべき?(英語では?国語では?)
先日、新学習指導要領における高校国語科の再編を話題にした記事が目に入りました。
記事によると、高校国語科の再編により4単位ものだった現行の「国語総合」が「現代の国語」と「言語文化」(各2単位)に分けられ、その結果、言語活動を中心とした授業がしにくくなる可能性が指摘されています。
記事では文章ジャンルを分けて扱うことの妥当性を疑っていますが、それ以前に、言語活動を中心とした授業を求めながら4単位ものを2単位×2に分割してしまったことが個人的には引っ掛かります。言語活動を数多く行う授業を展開するには、週2回よりも週4回の授業が継続して行えるプラットフォームを手放すべきではなかったのではないでしょうか。
領域ごとの授業時数
さて、その記事からの流れで、高校国語科学習指導要領に記載されている「各領域における授業時数」の情報に触れることになりました。
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の「3領域」をそれぞれ扱う授業時数が定められています。これについて、同解説では、
としています。
英語教師から見ての違和感
この「各領域の授業時数」に対して、英語教師は(少なくとも私は)かなり違和感を覚えます。
英語授業においては4技能だとか4技能5領域だとかで「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」を扱いますが、各技能・領域を統合的に扱うことが当たり前になされています。よって、国語科学習指導要領において例えば「『C読むこと』に関する指導については,10〜20 単位時間程度を配当するものとし,計画的に指導すること」といった記載には違和感を覚えます。まるで10~20時間程度は「読むこと」だけを別個に扱う授業が展開され、その授業の中には話したり書いたりする活動が一切ないような印象を受けます。そのような授業は(少なくとも英語科では)考えられません。
英語科における技能統合
私にとって、英語の授業において各技能を統合して扱うということはあまりにも当然のことだったので、立ち止まって考えることがこれまでありませんでした。
私の勤務校では、高校の旧「コミュニケーション英語」や現「英語コミュニケーション」にあたる科目を、英語ではEnglish Integrated Skillsと呼び続けています。そのことも、私の中で「技能統合は当たり前」という感覚がある一因ではないかと思います。他校での英語科目の呼称は存じませんが、本校のIntegrated Skillsという呼称に違和感を持つ英語教員はあまりいないのではないでしょうか。
英語科の学習指導要領では
高等学校学習指導要領には、以下のように記載があります。
このように、例えば「聞くこと」の領域において、聞き取った内容をもとに「話すこと」「書くこと」の活動につなげるなど、複数の領域を結びつけた統合的な言語活動を行うことが明記されています。
国語科では?
一方、先述の通り国語科の高校学習指導要領では「3領域」に関して各領域を扱う授業時数が示されていますが、それらの領域を統合して扱うといった記載は、ざっと検索してみた結果では見当たりませんでした。(もっとも、「話すこと・聞くこと」は一つの「領域」にまとめられていますから、そこは「統合」されていると言えなくもないですが。)
このことからも、国語科においては各領域をバランス良く指導する必要は認められているものの、それらを統合的に扱うという発想はあまり一般的ではなさそうです。
「領域統合」について考えてみよう
今回、国語科学習指導要領の一部分への違和感から、領域統合のあり方に目を向けるきっかけとなりました。
「英語科においては統合が当たり前すぎてあまり考えてこなかった」と書きましたが、色々と考えているうちに、本当に「当たり前」に統合しているのか、また「なぜ」統合するのか、様々に疑問が浮かんできました。
今後も領域統合について引き続き考えてみたいと思います。
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