添削したエッセイをどのタイミングで返却すべきか①

テストの答案や添削したエッセイの返却はどのタイミングで行っていますか? 授業の最初に返却し、それから解説や指導を行いますか? それとも、解説や指導を行った後で返却をしますか?

先日、教えている2クラスの論理表現の授業において、授業進行の都合上異なるタイミングでエッセイを返却することになりました。その結果、もしかしたらエッセイを返却するタイミングが後のrevisingの質に影響を与えるかもしれないと考えるに至りました。

最初に返却をする教師の心理

テストの答案であれば、おそらくまず返却してその後で解説という流れがごく一般的かと思います。エッセイの指導も、同じようにまず返却し、その後多かった誤りやreviseの際に気を付けたい点などを全体に一斉フィードバックするというのが自然と考える人も多いでしょう。

自分がどのような誤りをしたのかが分からない状態で一斉フィードバックを聞いてもピンと来ない、とも考えられるでしょう。その意味で、まず添削を返却し、個々の問題点を把握したうえで補足の全体フィードバックを受け取らせる。そのために返却を先に行う、という考えはもちろん理にかなっていますし、それが自然とも言えるでしょう。

先に返却をしない教師の心理

一方、教師によっては先に全体への一斉フィードバックを行ってから個々の添削を返却することを好む人もいます。

こちらを好む教師はおそらく、先に返却してしまうと、生徒が自分の作文・添削内容に気が取られてしまい、教師が行う一斉フィードバックに十分に耳を傾けられなくなると考えています。また、個別のcommon errorsを解説する際、その表現やエラーを自分がしていない場合、自分には関係のない話として、情報が左右の耳を通り抜けていってしまう、そんな心配もあるかもしれません。

どちらが効果的か

私の場合、「しっかり話を聞かせたい、しっかり考えさせたい」という思いから、後者(一斉FB→返却)とすることもある中、一方で授業進行の都合などで、特段の狙いもなく先に返却(返却→一斉FB)とすることもありました。いずれにせよ、その順番の相違が与えうる影響を特に考えていなかったことに気付きました。

冒頭に書きましたが、先日2つのクラスにおいて、授業進行の都合上、異なる順序で返却を行いました。

A組:返却→一斉フィードバック

一つのクラス(A組とします)では、授業の最初に添削したエッセイを返却し、生徒の手元にエッセイがある状態でcommon errorsや内容面でのアドバイスを行いました。そのアドバイスを受け、reviseしてくることをその日の宿題としました。

翌日、生徒がreviseしたエッセイを回収すると、特に内容面で大きく改善していました。添削やフィードバックの甲斐があった、と私の自己効力感が向上するくらい、確かな変化を感じました。(その喜びで前回の投稿におけるEffects of Students’ Essay Revision on the Teacher’s Self-Efficacyというタイトルで架空の論文を作り上げるに至りました笑)

特に驚いたのは、個別添削のうえでは内容面で不十分と指摘をしなかった生徒も、主体的な判断で内容面での改善を見せてくれました。授業中の一斉フィードバックから何かを学び取り、それを自らのエッセイに生かしてくれたようです。

B組:一斉フィードバック→返却

一方、もう一つのクラス(B組とします)では進行の都合上、先にプリントを使って一斉フィードバックを行いました。一通りの説明が終わってから個々に返却し、reviseを宿題としました。

翌日回収したrevised essayを見ると、A組と比べるとあまり内容面での改善が見られませんでした。端的に言えば、revisingの質が浅いと感じました。もちろん個人差の問題も大きいと思いますが、集団としてA組とB組のreviseの質は顕著だと感じました。

違いから考えられること

この2つのクラスにおける異なるフィードバック効果から、エッセイへの一斉フィードバックと返却の順番について考えさせられました。

これまで私は、「ちゃんと話を聞いてもらうためには、先に返却すべきか、一斉指導後に返却すべきか」くらいのことしか考えていませんでした。

しかし今回、回収したrevised essayで見えた違いから、返却を行うタイミングが及ぼしうる影響について、より詳しく、深く考えることになりました。

次回の投稿でより詳しい分析をしてみようと思います。

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