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ちゃんと迷惑かけてよ

「人に迷惑をかけなければいい」

 誰かに強く言われた覚えはないのに、気づけばそんな思想を持つようになっていた。そして、メディアやSNSで時々同じような言葉を目にする。

 寛容に見えて、それは無関心なだけだ。

「迷惑かけなければOK」の背後には「迷惑断罪おばけ」が潜んでいる。
 そいつは迷惑かけた瞬間に「あれほど言ったのに!」と、鬼の形相で飛び出して迫ってくる。

 お前が悪いんだ。だから、懲らしめる。免罪符を持った化け物の攻撃は容赦がない。行為だけでなく、人格までおとしめる。

「迷惑かけなければOK」
「迷惑かけたらアウト」

 二択の世界はとても息苦しい。
 だって、少しでも境界線を飛び越えたら袋叩きにされてしまうのだから。いつも人様の値踏みするような視線に怯えなくちゃいけない。

 それよりも迷惑をかけていいの方が僕は楽だと思っている。かつてそういうことを書いた。

 そして、今思うのは「ちゃんと迷惑かけてよ」ということだ。
 悪意を持って寄ってくるのは願い下げだけど、迷惑かもしれないと悩んでいるそれは、伝えてもらわないと応えようがない。

 もしかしたら、迷惑じゃないかもしれない。
 迷惑だったとしても、なるべくなら応えたい。そう思っているんだ。
 イヤならイヤって言うし、応えられないなら応えられないって言うからさ。

 もしまだお互いに言えないなら、それはあなただけの問題じゃなくて、僕とあなたの問題だから。言えるためにはどうすればいいのか、一緒に考えようよ。

 そのきっかけのために、ちゃんと迷惑かけてよ。
 僕もしっかり迷惑かけるからさ。

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