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「なんも考えてない」の凄み

 分野に関わらず、圧倒的な能力を持っている人に出会うと衝撃を受ける。憧憬を感じながらも、少しでも自分が成長するきっかけを見出したくて、尋ねる。

「なにを考えながらやっているんですか?」
「なんも考えていないよ」

 きっと返答に肩を透かされたような気がして、モヤモヤするだろう。
 なぜ教えてくれないのだろうか? 絶対に秘密があるに違いないのに。

 おそらくその言葉に嘘偽りはない。本当になにも考えていないのだ。

 なにも考えなくてもできるから、凄いのだ。
 なにも考えなくてもできるレベルまで昇華されているのだ。

 運転に不慣れなうちは、バックミラーやサイドミラーを何度も確認する。そして、次はどうしようと考え続けている。けれど、慣れてきたら不要な動きはどんどん減り、いちいち思考を介さなくても身体は動く。

 それと同じことが起こっている。瞬間瞬間で最適解を導き出して、思考が働く隙もなく行っている。だから、「なんも考えていない」は事実だ。

 ただ、その言葉を間に受けて、真似してみても思い通りにはいかない。下地がないのだから当然だ。だから、考えなくていいわけじゃないのだ。慣れない運転と同じように、最初はああでもないこうでもないと試行錯誤しながら、考えなくてもできる領域を増やしていく。

 そういえば、僕は同じような質問をされて「なんも考えていないですよ」と最近口にした。
 それは果たして、なんも考えてなくてもできるのか、ただボーッとしていただけなのか、どちらだろう?

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