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勝手に動く身体

「ドンッ」と腹に響く大きな音がして、なんのことかと思った。耳を澄ませてみると、もう一度鳴る。

 花火だ!

 気づけば、スマホだけ持って部屋着のまま、家を飛び出した。1枚羽織ってくればよかったと思いながら、音源に向かって走る。けれど、どれだけ進んでも僕の視界に花火は入ってこなかった。

 マンションやらビルが邪魔して、欠片すらも見えない。歩道橋に上ってみても同じだった。しばらく歩いてみて、寒さに勝てずに引き返した。

 そういえば、これだけ身体が勝手に動くのは久々だ。
 考える僕達は、なにをするでも意識が介入してくる。メリットやデメリット、意味、目的。そんなことばかり考えているせいで、身体は立ち尽くしているのだ。

 だから、身体の欲求すらもわからなくなり、なにが食べたいのか、どれくらい寝たいのかもわからなくなってしまう。

 でも、小さな子どもを見てみよう。彼ら彼女らはもう身体が動いてしまうのだ。触るなと言っても、触ってしまう。それはもう身体の働きで制御できない。それは大人からしたら困ることかもしれないが、身体としてはそちらの方が自然で、心地よい。

 だから、考える間も無く動いた自分の身体を、僕は誇らしく思う。

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