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アウフヘーベンによろしく

 白か黒かを話し合っている時に、白でも黒でもないと言うのは面倒な奴だ。
 どちらでもいいから、はっきり口にする方が好まれる。自信がある、決断力があって信頼できると印象を与える。
 選択をしようとしているのに、第3の選択肢を出すのは、議論を長引かせることになりかねない。だから、敬遠されやすい。

 はっきりしない奴。その烙印を押されるのがわかった上で、なぜするのだろうか?
 あえて逆の見方をすれば、そんなに何事もはっきりと白黒つけられるだろうか?

 迷っている時点で、反対の意見が出ている時点で、それはもはやそんな単純な問題ではないのだ。全員が納得する答えの方が現実には少ない。だから、別の道を探る。

 どちらかが両手を挙げて、もう一方がうなだれる。そういう解決の仕方を続けていると、後々溝は深まっていく。だから、勝者も敗者も出さないために、「私達の」答えを探る。選択肢を増やすことの本質はそこなのだ。

 だから、煙たがられながらも、時に面倒なことを言ってくれる人はとても貴重だ。

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