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風物詩は音もなく消える

 今年は変だなと思っていた。なにか物足りなさを感じているのに、なにに対してなのかわからない。それがふとニュースを見ていたら、気づいた。

 今年になって1度も花火の音を聞いていない。

 例年ならば、遠くで聞こえる破裂音で、空を見上げるのだ。去年はそれどころではないイレギュラーな年だったが、2021年も花火大会はいくつかの中止が既に決まったとキャスターが言っていた。

 日本に住んでいれば、だれしも1つや2つくらい花火の思い出があるだろう。常に意識しているわけではない。けれど、空に花が開いているのに目を向ければ、魅了されてしまう。

 風物詩として当たり前にあったものが、消えていく。なんと寂しいことだろう。

 日常的にあるものと違って、たまにしか出会えないものは普段意識しない分、忘れられやすい。もしかしたら、既にいくつかの物事を僕達は忘れてしまっているのかもしれない。

 せめて、自分の喪失しているものに自覚的でありたいと思う。

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