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私にしかできないこと

 個人が手軽に発信できる時代になって、個性がより重視されるようになった。「自分らしさ」を押し出せなければ埋れていく。そんな状況にあって、「私にしかできないこと」とはなんだろうか?

 たとえば、文章を書くのは言葉を操れれば、誰でも書けるが、それを仕事にしている人がいる。上手い文章ははたして「私にしかできないこと」だろうか?

 ライティング講座が存在する。先人がある程度体系化してくれて、再現可能であるから書き方を教えられ、学んだ人は実践できるのだ。つまり、技術はある程度の期間と努力があれば、身につけられる。

 つまり、「私にしかできないこと」とは技術のレベルの話ではない。感性の世界の話だ。
 スポーツ観戦に行った体験記を書くとして、その試合の結果は、もうだれが書いても「1−0」は「1−0」だ。けれど、同じ試合を見ていても体験は異なる。出場選手の様子はどうだ、他の観客の雰囲気はどうだ、と書く人によって受け取る情報は随分異なる。

 一人一人の感性が異なる以上、あらゆることが「私にしかできないこと」なのだ。掃除1つとったって、自分の掃除の仕方は唯一無二だ。けれど、みんなが唯一無二ならば、それは「みんなができること」でもある。

 よって、「私にしかできないこと」を考えるのは、そんなに意味はないのだと思う。もし明確にあったとして、自分がやらなかったら、それは消えていくわけだ。それでも、世界は終わらず、続いていく。

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