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不確定要素を排除しない

 以前から存在は知っていたけれど、Amazon Hub ロッカーの実物を初めて見かけた。このロッカーを指定して配達をお願いすれば、配達員はそのロッカーに入れれば良いし、ユーザーは好きな時間に取りにいける。

 以前から時間指定でも受取手がいないなどの行き違いは起こっていたので、両者両得のサービスだ。

 非常に便利だなと思ったけれど、同時にまた人と人が関わる機会が減るのだと思った。今の非接触の社会情勢としてはそちらの流れは奨励されるべきなのだが、やるせなさを覚える。

 効率化の行く末は、人間の排除だからだ。それは単に機械の方が作業量をこなせる以上の問題だ。

 人間は不確定要素が多すぎる。

 まず体調が一定ではないし、モチベーションも違えば、正確さにもムラもある。
 不確定要素は、余分な作業を増やす。繰り返しのチェックが必要になったり、商品・サービスの質が異なることでクレームが生まれたりする。だから、不確定要素は排除した方が無駄が減って、みんな笑顔になれる。

 でも、世の中が効率化して不確定要素が少なくなればなるほど、耐性が低くなっていくのではないだろうか? それを僕達は望んでいるだろうか?
 飲食店のチェーンに行けば、注文から10分以内に提供しろと言われる。それは、10分を超えるとクレームが発生しやすくなるからだ。早く出てくるのが当たり前になったからこそ客は待てなくなってしまった。

 だから、人間という不確定要素を排除すればするほど、人間に対する耐性はますます減っていく。他者に対してますます不寛容になっていく。そんな危惧がある。

 とはいえ、人間同士が関わらなくても幸せな世界ができあがるのならば、それはそれでいいのかもしれない。ただ、人間を排除できても、自然という不確定要素は排除できない。気象庁の予報は精度が上がっても、未だ外れる日がある。

 やっぱり不確定要素に対する耐性はあった方がいいし、僕は不確定要素を排除したくない。それよりも不確定要素を楽しめるように、人間が変わっていく方が心地よいと思うのだ。(所要時間:32分05秒)

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