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ジャニーズ問題 ネスレ

ジャニーズ問題で元ネスレ日本の社長だった高岡氏の発言が話題になっています。彼は自分が社長だった10年間に一度もジャニーズのタレントを使ったことが無いと言います。その理由は広告業界の人たちからジャニー喜多川氏の悪い噂を聞いていて、敢えてそんなリスクは取れないと判断したからだそうです。ただそれ以前の問題として日本では広告業界が独占状態で電通などがタレント毎に値段を決めていて割高だったと言う背景もあったようです。その為、小さな芸能事務所の役者を起用し広告会社のマージンもネスレ主導で費用を抑えたのです。でもジャニタレを使わないから商品の販売が落ちることなどは絶対になかったし、飽くまで商品そのものに魅力があるかどうかで消費者は購入を決めていると極めて合理的で現実的な考えを披露しています。こんなことを言っている高岡氏ですが、実は「きっと勝つ」の駄洒落キャンペーンを仕掛けたのもこの人ですね。高岡氏は大抵の日本企業はジャニー喜多川の悪い噂は聞いていたはずなのに今になって大騒ぎするのはおかしいと批判もしています。確かに実力主義・成果主義で常に結果を求められる外資系企業から見ると時流に乗っかる事なかれ主義、横並び主義の日本の経営は噴飯物のレベルかも知れませんね。

ただ一つだけ日本の社長を庇うとすれば、日本ではCMで起用するタレントまで社長決裁にする企業は殆んど無いと言うことです。勿論同族会社ならトップダウンで全てを決める企業もあるかも知れません。でもサラリーマン社長でそこまでやる人は殆んどいないと思います。現にMBA資格を持ち日本では稀有な経営者とも言えるサントリー新浪剛史社長でさえ、ジャニーズ問題が報道されるまでこの問題に対応することはありませんでした。(そう言えば昔のサントリー宣伝部はトリスおじさん等楽しい広告を出してくれていましたね。)何故こうまで外資系企業と日本企業が違うかと言うと一つには外資系企業の日本代表の職務がかなり限定的なので広告にも十分の力を注げる背景があると思います。2年間外資系企業で働いた経験から言えば商品開発や工場建設など重要な事項はほとんど外国本社で決定されます。扱う商品でさえ全世界を統括するプロダクト担当者が決めるのでなかなか日本だけのニーズで決定されることはありません。従って外資系企業日本代表に託された重要な業務はコンプライアンスと広告宣伝のほぼ二つになるのです。つまり広報や商品広告について直接社長が口を出すのはある意味当然のことなのです。

話は少しそれますが、私がニューヨーク駐在だった頃、ワシントンで国連機関MIGAの長官をしていた元メリルリンチ日本証券社長の小林氏にお会いしたことがありました。彼女は成蹊大学文学部を出て三菱化成に入社、4年間普通にOL生活をした後、メリルリンチ日本証券に転職したそうです。40才で業務部長になり2年後には業務統括本部長と順調に出世し、翌年にはなんと日本法人の社長になったのでした。本人曰く、ずっと管理部門にいて営業など一度もやったことがないと言うと社長は日本でのコンプライアンスだけやってくれればいい、君が適任だと言われたそうです。広告宣伝業務もあったのでしょうが、証券会社ではコンプライアンスが一番だったようです。

何をすべきかタスクが明確で、目標を立てきっちり成果を出すことが求められる外資系企業ですが、一方でリスク管理もまた極めて重要なことなのですね。何か起こってから泥縄で対応するのではなく、最悪の事態を想定した経営こそ日本の経営者に足りないものなのかも知れません。そう言えば経団連の十倉会長(住友化学社長)がジャニーズ問題についてジャニー喜多川の悪行は許せるものではないと前置きした上でタレントに罪はない、むしろ被害者なので働く場所を長く奪うことはよくないと言っていました。その夜の報道ステーションではジャニーズ事務所べったりのテレ朝らしく、この発言の部分だけを切り取り映像でしっかり伝えていました。全ての会社が一斉に同じ方向に動き出すことに対し敢えて別の意見を言う勇気は評価したいとは思います。十倉会長は不祥事のあった企業の商品不買運動とは違う、ジャニーズのタレントは人間なんだと言いたかったようです。もちろんタレントは人間であることに間違いはありません。それでもやはりジャニーズ芸能事務所の商品であることに変わりないと思います。日本企業の広告宣伝担当者は今こそ電通等への丸投げを止め、長期的な自社の企業イメージを念頭に置きつつ、効率的な広告はどうあるべきか、自分の頭で考え、実行することが必要なのではないでしょうか?いろいろな広告に出て来る有名人を使っても商品は記憶に残りませんよ‼️


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