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小さな希望の光


私って、将来仕事に就けることができるんだろうか?
そんな不安がいつもあった。
小学六年生になったばかりの私は、将来の仕事について悩んでいた。

「今日も花江公園で待ち合わせね!」
そう言ってランドセルを背負った友達の瑠衣が家の方面に走っていくと、残された私たち三人もそれぞれ自分の家に帰っていく。
家でゆっくりしたいな。でも皆は公園に行くみたいだし、今さら行かないって言うより、行ったら行ったで楽しいし、友達は大切にしないといけないしなぁ。
友梨佳はそんなことを思いながら、家までの道を小走りで向かった。

小学六年生の友梨佳には友だちがいた。
幼稚園からの幼馴染もいたし、学年が上がるごとに新しい友だちも増えていった。
けど、友梨佳はずっと自分の殻にこもっていた。
自分の意見があるようでないような、モヤモヤした感じをいつも抱えていた。
嫌だけど、それを誰かに押し付けてまで回避したいとは思わない。そんな感覚を常に抱いていた。
そして誰かの顔色をうかがうようになって、家では長女として、学校ではいい生徒、NOと言わない友だちとして生きていた。

午後六時。
花江公園のある〇〇団地のスピーカーから友梨佳たちの門限を知らせる音楽が鳴る。
「じゃあまた明日ね!」
口々にそういい合って、またそれぞれの家に帰っていく。
友梨佳はわざと一人になれるように、遠回りする道を選んで皆と別れた。
はぁ、今日も疲れたな。人の面白くもないのに、みんなが笑っているから合わせてる。ほんとに疲れるなぁ。
団地の階段をのぼり、玄関の扉を開けると疲労感が一気に襲ってきた。

「おかえり」
キッチンに立っていた母は、友梨佳をちらりと見ると、また手元で切られているリンゴに目を落とした。
リビングの中はカレーの匂いが充満している。
我が家ではカレーの隠し味にリンゴをすりおろしていれているのだ。
いつも友梨佳と弟の湊が帰ってきてすぐに夕飯が食べられるように準備してくれていた。
友理奈はカレーが好きじゃない。
食べられないわけじゃないけれど、食べたくないのだ。
けれど母がカレーを作るのは、弟がカレーが好きだからなんだろうと思う。
「ただいま」
元気な少年の声が友理奈の耳に届く。
「おかえり」
母と友梨佳の声が重なる。
カレーの匂いをかいだ湊は、さらに元気になり部屋の中が一気に活気づいた気がした。

夕食を終え、母が食器を洗っていると父が帰ってきた。
ヘロヘロの黒のスーツを着て玄関で靴を脱いでいる父は、黒い重そうな鞄を手に持っていつも疲れているようだ。
友梨佳は両親の仕事について詳しくは知らないけれど、お客さんを相手にする仕事ということは知っていた。
近所のスーパーや公園に行くと、たまに声をかけてくれる。
そのたびに、父と母は”外の顔”になってニコニコと笑顔を見せるのだ。
人の顔色を窺っているのは同じだなと思うけれど、いま人と関わることに疲れているのに、大人になっても疲れることを仕事にするなんて信じられない。
けど仕事ってそういうものばかりだから、なんとかして慣れていかなきゃいけないんだとも思っている。
そういうどうしようもない不安に襲われたときは『大丈夫。私はまだ小学生だから、徐々に人に慣れていけばいいんだよ』と心の中で呟いて、心を落ち着かせていた。

ある日の夕方。
大好きなアニメを見ていると、今まで気づかなかったことが目についた。
それはエンドロールに映るたくさんの人の名前。
その中で、好きなキャラクターの名前の横に人の名前が書いているのを見つけた。
「ねぇ。このキャラクターの横にある人の名前ってなに?」
今日もキッチンで料理を作っている母がテレビの画面を見た。
リビングには肉の匂いが充満している。今日はハンバーグだと朝に母が言っていたのを思い出す。
「ああ、それは声優さんっていう職業の人たちよ」
「声優さんって何をする人なの?」
「アニメのキャラクターの声を担当している人よ」
「え!?!?!?!?」
次の言葉が浮かばない程、友梨佳は驚いた。
だって、アニメのキャラクターの声ってコンピューターで作られてるんじゃないの?
だって、本当に生きているみたいに聞こえるよ!

そこから友梨佳は声優の仕事や、好きなキャラクターを担当している人の名前を調べたり、自分にできる最大限の方法で調べつくした。
へぇー。声優って、台詞を見て感情を表現するお仕事なんだ。
私は人前に出ることが苦手だけど、声だけなら大丈夫かも。
演技は難しいかもしれないけど、台本を読むだけだから私の意見は必要ない。
人とコミュニケーションを取る回数もなさそうだし、私にはこれしかない!!!
今までの将来の不安は一気に吹き飛び、目に見える世界がキラキラと輝きだした。
私は、声優になる!
この日から、友梨佳の毎日がキラキラと輝きだしたのだった。




こんにちは。空沙です。
久々のショートショートです。
いやぁ…わからん!(笑)
物語ってなんなんですかね?
途中で何を書いているかわからなくなる現象に名前を付けたいです。
そしてその改善方法を知りたい…。
あと物語の終わり方もよくわからんし…。
わからないことだらけですね(笑)
願望としては、ショートショートとエッセイを半分の割合で書いていきたいですね。
……がんばらないとな……。
ハイ、ガンバリマス。



今日も読んでいただいて、ありがとうございます!!!

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