ノベライズ「イキなりご主人様宣言一話」その3
間違いありません。部長です。
この人、鬼の部長です。
私はくるりとドアに向かって回れ右しました。
「し、失礼しました!」
でも背後からの壁ドンと、たたみかけるような部長の声が、私の動きを止めました。
「逃げんなよ」
「ひい……」
「副業禁止のうちのOLがなんでこんなとこでバイトしてんだ?」
「これには海より深いわけが」
「説明しろ」
「はいっ」
涙目の私。
よりにもよって1番会いたくない人に、どうして会ってしまうのでしょう。
神様の意地悪〜(T_T)
さて。
カラオケboxみたいなソファーに座り、尋問タイムです。
「つまり岳の借金500万を背負って、風俗に売られたと。そういうことか」
「風俗じゃないですよ。メイド喫茶です。ここ、とっても時給がいいんです。制服も可愛いし」
主任は眉を寄せました。
「お前な、なんで俺に相談しなかった」
「部長には関係のないことですから」
「岳は俺の元部下だし、俺にも監督責任がある」
「連帯保証人になったのは岳さんが会社をやめてからですし、やっぱり部長には関係ないですよ。土日だけのバイトなら会社にも迷惑かけないと思ったんです……マンツーマンの接客だし……ばれないかなって」
「よくそんなにあっけらかんとしてられるな。500万円は大金だろ?」
呆れ顔の部長に私は笑って言いました。
「前向きなだけが取り柄ですから」
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