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猫はお好きですか?(猫の詩三篇)

年老いたメス猫と暮らしていた私の元に、ひょんなことから保護猫が転がり込みました。

生後二日の猫というより、虫とたとえた方がいいような三毛の子猫でした。
目も開いていない、食事も排泄も自分では出来ない小さい命のために私は必死になりました。

先に飼っていた猫が「みぃちゃん」だったので、「みぃちゃんはぁちゃん」(ミーハーの語源)から子猫に「はーちゃん」と名付けました。

「寝子(ねこ)」

寝ている時のはーちゃんをなるべく

起こさないようにしている

少しでも大きくなれば

おなかに入ったミルクが

消化されれば

眠りは尊い

眠って起きること

そのことが一番尊い


育てきれるか不安だったときに作った詩です。

野良猫の生んだ子だったので
動物病院の先生には感染病の危険性を言われました。
さらに、まず幼すぎるので育てるのは難しいですよ、とも言われました。
同居の猫との事もあります。

しかしそんな心配をよそに子猫は本当に
「あっ」という間に育ってしまいました。

血液検査も見事にクリア。なんの病気も持っていませんでした。

今は、元気に家の中を破壊しまくっています。
同居の猫とは仲が悪いですが、追いかけあって家の中を走り回っています。

そんな中、生まれた詩が以下の詩です。

「生けるバステト」

かのエジプトの女神バステトの

黒き彫像が欲しかった

猫の神は女を模して

挑発するように

くびれの腰を強調させて

金の瞳を輝かせていた

願いもむなしく

カネはなく

変わりに小さき命が転がりこんだ

黒も金もおまけに白い靴下まで履いた三毛猫は

我が家の主のキジの淑女を怒らせた

キジの錆色も美しい雌猫はかなりの高齢

バステト像は彼女の墓標にするつもりだった

急に転がり込んだ三毛の子猫の

色気もない挑発で老猫は走り出す

墓標など、必要ではなかったか

彫像のように凝固していない

二匹のバステトは温かく蒸気しながら

狭い我が家を駆け巡る


私はこうして楽しく、いささか厄介に猫と暮らしています。
猫の魅力は猫が嫌いな人に言っても理解できないものかもしれません。

ですが、飼っている当人には非常に愛しい存在です。

猫を偏愛した感覚を書くと次のような詩が出来ました。


「猫の旨味」

老いた猫は爪の先までおいしいものだ

皮膚に喰い込むその感触が

生きているそのものの痛み

柔き被毛を丹念に頭の中で舐め尽くし

歯ごたえのありそうな

手足をそっと撫でる

直後

力強き顎に手をはさまれる

貴女も私を食べたいのだね




こんな風に描くと猫は人間の女の人に近い生き物のような気がしてきました。

猫は、

「柔らかな毛並みは撫でられるために生まれてきたのよ」

そうささやくかのように今日も寝そべっています。


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