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好きなものを最後までとっておくタイプだと思われたくない

イチゴのショートケーキのイチゴは最後に食べたい。

ラーメンが給食にでた日は、
ラーメンは最後に食べたい。

とんかつ定食を食べる時は、最初にキャベツを
平らげ、とんかつは最後に食べたい。

一番大好きなものは、最後のご褒美として
堪能して食べたいのだ。

至福のひととき。

あることをきっかけにそれができなくなって
しまった。

小学生の頃、給食のメニューで大好きだった
甘辛ソースあえのチキンがあった。

大好きなチキンを最後に食べたくて、
最初にサラダや主食に手を付ける。

決して、途中でチキンにふれることはしない。

どうでもいい前菜を平らげたところで
メインディッシュのチキンを食べる。

まちにまった、メインの時間。

食べようとしたその時、
前の席で食べていたクラスメイトに、

「なんで、それ残してるの?」

と鼻で笑われながら言われたのだ。

おそらく、私がチキンが大好きで最後のお楽しみ
として残していることを察したのだろう。

人参やピーマンが残っていたら、嫌いで残している
んだと納得がいくだろうが、みんな大好きなお肉を
嫌いで残すのは珍しい。

チキン以外のメニューをきれいに平らげ、
最後までチキンをとっておく様子が滑稽に思えた
のかもしれない。

クラスメイトに悟られたのが悔しかった。

鼻で笑われたこともあり、それを認めなくなかった。

またもや私のひねくれた性格が発揮されてしまった。

なんで、残しているのかと問われ、

「嫌いだから」

と本音と真逆のことを言ってしまっていた。

本当は大好きなのに。

最後のメインディッシュとして
楽しみにしていたのに。

あろうことか、私はそのチキンを

「食べる?」

とクラスメイトにさしだしていた。

「嫌いだから」と言ったからには、その言葉に
真実味を持たせなければならないと思ったのだ。

クラスメイトは嬉しそうな表情で私のチキンを
受け取り、おいしそうに食べている。

何をやっているのだろう。

これほど屈辱的なことはなかった。

鼻で笑われたうえ、最後のお楽しみとしてとって
おいた、大好きなチキンを目の前で食べられている。

「大好きだから最後までとっておいたんだー」

と陽気に言えば済んだはずだ。


ひねくれた性格のせいで大好きなチキンを
逃してしまったのだ。

正直に言えなかった。

最後まで大好きな食べ物をとっておくタイプだと
思われるのが恥ずかしかった。

この一件以来、人前で食事をするときは
真っ先に大好きなものを食べるようにしている。


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