見出し画像

変態気質が爆発して眉毛を失った頃

耳そうじがきっかけで変態気質になった私。
成長するにつれて変態に拍車がかかっていた。




『毛を抜く』行為に走ったのが一例である。
父親のひげを毛抜きで抜いたり、自分の足に生えている毛を抜いたり。

特に父親のひげを抜く時間は、我を忘れるほどだった。
図太いひげを1本1本、毛抜きで抜いていく。
痛がっている父親をよそめに、ひげが抜ける快感を味わう。
抜けた毛の根元には、透明できれいな毛根がしっかりとついている。
これを見るのもまた快感だった。

ガムテープをふくらはぎにしっかりと貼り付けて、
毛が生えている方向に逆らって、勢いよくはがす。
こういった遊びもよくしていた。

高校2年生の頃、毛抜き遊びが功を奏して、
自分の体毛を抜くことがクセになっていた。
授業中、指の毛を抜いたり、腕の毛を抜いたり、
気づけば、眉毛まで発展していた。

眉毛を抜くのがエスカレートし、日に日になくなっていた。
毎日鏡を見ているせいか、眉毛が薄くなっているのに
違和感を感じなかった。

そんな中、野球部が甲子園出場のかかった県大会で
決勝まで勝ち残った。
全校生徒で、応援に行くことになった。

私はバスケ部のみんなと一緒に腹の底から応援をした。
メガホン片手に必死に母校の勝利を願う。
しかし、数十年ぶりの甲子園出場は叶わず、
結果は負けに終わった。

帰宅すると、

「あんたテレビに映ってたよ」

と家族に言われた。
どうやら、その日の試合が地方局のNHKで放送されていたようだった。

テレビに出るという経験がなかったので、それをきいて嬉しかった。
さぞかし、一生懸命応援している姿が輝かしく映っていたことだろう。
家族が録画していたので、早速見ることにした。

私は確かにテレビに映っていた。
画面に映し出された私は、完全に眉毛を失っていた。
チンピラの下っ端にいそうな形相だった。
チンピラがただただ叫んでいるだけのように映って見えた。

毎日鏡で見ていて、違和感を感じなかったのだが、
眉毛がない自分と、眉毛がある子が並んでいる画を見て
初めて事の重大さに気づいたのである。


それを機に、ぱったりと毛を抜く行為を辞めたのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?