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北斎の奇行 〜リアル"売名"行為編〜

この確変が止まらなくなったかのような弾ける笑顔のご老人は


葛飾北斎


という世界に轟く我が国を代表する浮世絵師です。

江戸時代に勃興して爆発的に発展、普及し、時に社会現象にもなった浮世絵という視覚メディアを
世界に影響を与える"芸術"まで昇華させ、その領域を牽引した北斎。


人物、風景、花鳥、果ては妖怪画においても現代に通じ得る作品を世に残し
描けないものがないのかと思わせる画才は、有力武家の墓から作品が出土するなど地位を問わず多くの人に愛されました。


画力もさりなん、自身をプロモーションすることにも達者であり


「おい北斎、デカい絵描いてみろよw」


と煽り散らかされた北斎は名古屋の祭りの際に120畳分の巨大な和紙に達磨の絵を描いて
舐め切った聴衆を一蹴し、話題をかっさらいます。


何故か英語の説明文で高さ180mという東京タワー超えてる資料がある。
因みにこの絵は戦禍で消失。


話題がまた話題を呼び、幕府にまで呼ばれた北斎は

「君すごい人らしいじゃん?ちょいココで絵描いてみw?」

と、お上からも若干煽られますが
ここでビビって描かずは愚行であり、されどただの絵を描くは凡庸の極み。

北斎は渾身の作品でコレに応えます。

[北斎さんの制作レシピ]

1、大きな紙を広げます。

2、川のように力強く、それでいて滑らかな線を描きます。

3、ここで用意しておいたニワトリ(⁉︎)の足裏に絵具を塗ります。

4、先ほどの紙の上にニワトリを放ち、歩かせます。

5、完成です。(北斎逃げる)


という大一番でニワトリと共同制作をする奇行に走るなど
パフォーマーとしても格の違いを見せつけます。


ニワトリの足跡が紅葉のように見えて…みたいなことらしいが
この話自体ぶっちゃけ信憑性が怪しい。

有名絵師だって言うから呼んだらニワトリ持ってる芸人みたいなおっさんが来たらシュールだし
多分ニワトリ大人しく歩かないし爪で紙が破けるし。


そんな北斎の作品ともなれば私の生命保険金額が鼻くそに見える金銭価値かと思えば
全てがそうではなく、北斎が記した教科書「北斎漫画」などは1枚数千円で買えたりします。

今度のハッピーセットは全12種

「北斎漫画」(上の画像は一部)は北斎が気ままに描きまくった全15編のデザイン見本帳のようなもの。

当時、私淑も含めれば1,000人は弟子がおり
異業種からも教えを乞われる北斎。

「絵ってDon't think, feelじゃん?」

と弟子に言ってはいたものの「いや教えろや」と言われてしまい
逐一教えてたら自分の制作時間がないため

「これでも見てろや」

ということで作られたのが「北斎漫画」である。

かなりの大ベストセラーであり、最終編の刊行は北斎没後の明治初期となり
数も再刊行もシャレにならんものなので今でもそんなに金銭高価はない。

後世に名を残す北斎ですが、この「葛飾北斎」という名前だけが彼を表す名前ではありません。


その名前の総数、実に30以上


この当時の人としても、絵師としてもシャレになっていない名前の数に問題も起こり
また、この出世魚もドン引きの奇行の一端は金欠だったことが原因とも言われます


北斎の幼名は時太郎、少し後に鉄蔵と名乗ったと言われます(諸説あり)。


やがて絵師になり、勝川春章の元に弟子入りをすると
勝川春朗を名乗るようになります(春も朗も春章の号から名付けられる高待遇)。


浮世絵師は一般的に実力がつけば師匠の名の一部をもらう。
似たような名前がやたらめったらいるのはこのため(なんなら同じ名前もいる)。


師、春章からはかなり期待をかけられていましたが
師匠の画風以外も学びたくなった北斎は「バレへんやろ」と他の流派を勉強し始めたりします。


しかし、普通にバレたり師弟のいざこざもあり破門。
名前も叢春朗になったり、群馬亭になったり方向性が定まらないSNSのアカウントくらい変わります。


やがて「宗理」を名乗る頃、一端の絵師と呼べるくらいになります。
が、生活は決して楽ではなく当時の低所得層がする仕事(路上の香辛料売り)をして日銭を稼いでいました。


これを売ってる最中にかつての師匠、勝川春章夫婦に遭遇。
北斎が「恥ず過ぎて死ぬかと思った」と語る日である。


やがて弟子もとるようになりますが
絵の報酬には拘るのに金銭管理にまるで興味がない北斎は慢性的な金欠の最中


「なーんかスッと売れるもんないかな〜」


と頭を悩ませ、そして北斎は閃きます。


「売名しよ♪」


絵師が師匠から拝命した際に御礼金のようなものを納める慣わしがあり
北斎は一時期、金が入り用になると名前を弟子にあげて金を得るという文字通りの"売名"をしていたとされます。


そのため、名前の情報はあるのに作品がないというモノがあったり
同名だが二代目(弟子)のものになる作品があるという後年の研究者が舌打ちしたくなる状態に。


それがSNSの乗っ取りとか微塵も怖くない巨匠


葛飾北斎です。


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