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3DCG(Blender)をテックイベントのオープニング動画制作に活用してみました

映像制作の仕事で初めて、Blenderを活用した3DCGの映像素材制作をしました。Udemyの講義やYouTubeの作例で学んで得られるノウハウとはまた違った学びが得られたため、備忘録も兼ねてまとめました。

オープニング動画の要件ヒアリング

今回チャレンジしたのは、会社で開催した「CA.go」というテックイベントのオープニング動画制作です。企画の相談をしてくれた主催者に、オープニング動画のコンセプトイメージを聞いてみると「テックイベントとワールドカップを組み合わせたような感じ」でした。

自分は、ヒアリングの時点では、3DCGは使用しない予定でいました。30秒の尺だったのでAfterEffectsやPremireを活用し、既存素材と組み合わせたグラフィックモーションで制作しようと考えていました。

しかし、テックイベントの主役は登壇者であるエンジニアであって、来場者/視聴者もサッカーの試合を観に来ているわけではないので、あまりモーションバリバリのエフェクトがきいたオープニング動画はイベントの空気感に合わないと感じました。むしろ、数年ぶりにリアルなテックイベントに来る人も多いので、多くの人が視聴した「ワールドカップ」という体験をベースに、「テックイベントに参加している!」という一体感に役立つのが、このオープニング動画の役割だと思いました。そこで「CA.go」のロゴを活用したオリジナル感を、Blenderで表現する事に方向性を変えました。

「映像制作になぜ3DCGを活用するか?」。案件ごとにそれぞれ理由があるかと思いますが、「なんのために作っていて、なにを目的としたいのか?」の方向性を間違えると根拠のない技術投入になるので、業務でツールや技術を導入する際は気をつけたいと思っています。

Blenderでオリジナル感のあるサッカーボールを作る

Unityは1年以上、映像制作業務で活用しているのに対して、Blenderは学習をはじめて4か月しか経験がなかったので少し心配でしたが、業務で活用する事で道が続くと思いチャレンジしてみました。

最初に着手したのは、サッカーボールに「CA.go」のロゴをつけることです。ボールにロゴがついている画像を見てもらえれば、イベントの運営チームも完成形のイメージが湧くかなと思ったからです。

ロゴの貼り付けは、Blenderのシュリンクラップモディファイアで付与してみました。

3Dモデルが静止状態だとうまく貼り付いたのですが、ボールを回転させて転がすと、付着が遅延してしまったので、この方法は断念しました。設定次第でうまくいったのかもしれません。

ボールのテクスチャに直接ロゴを貼り付けるために、UV展開してロゴの位置を確認し、最終的にはテクスチャ画像に対してPhotoshopで直接ロゴを貼り付けました。Udemyの講義で何度もUVエディタを操作していたので、一番簡単なやり方に至れたのは良かったです。

シュリップクランプモディファイアを使うと、オブジェクトに対して浮かせられたりするメリットがあるので、機会があれば再チャレンジしてみたいです。


芝生をパーティクルでつくる

サッカーコートの芝生はパーティクルを使ってゼロから作成しました。Blenderには「Grassblade」など便利なプラグインがありますが、自分の現在のスキルでは使いこなせないと感じたため、パーティクルで自作をしました。

素材の書き出しの際、静止画にはCyclesレンダリングエンジンを、動画にはEeveeレンダリングエンジンを使用しましたが、パーティクルの描画が各レンダリングエンジンで異なっています。最初は「CA.go」のロゴを敷く箇所に芝生が生えないように、パーティクルを生やす平面メッシュの一部をカットして使用していましたが、Cyclesにした際に生え際がEeveeと異なっていました。そのため、最終的にはウェイトペイントで芝生の発生エリアを管理しました。

Udemyの講義で、パーティクルの配置をコントロールするためのウェイトペイントの項目がありましたが、正直よくわかっていませんでした。ところが制作上のニーズが出てくると、それで対応せざるを得なくなるので、強制的に使う機会に直面したのは良かったです。

タイムラインでカメラワークの制御をする

サッカーボールの回転は、撮りたいシーンの変更によって、転がる距離が伸びたり縮んだことにより、次第に不自然な回転になってきました。そのため、回転軸をタイムラインでかなり調整しました。球体が転がる速度と距離に対して、自然な回転を表現するって難しいなと思いました。失敗するとボールがすべっていく感じになりました。

ボールの回転停止の際に、カメラに対してロゴが向いた位置で止められるのは3DCGならではの演出だと思いました。

カメラワークで近接や天井カメラなど切り替えて撮影したのは楽しかったです。長く続けてきたスチールカメラの仕事や、動画撮影の業務経験が活きてくるので、カメラワークを工夫するのは楽しかったです。

UnityやAfterEffectsであれほど苦手だったタイムラインやキーイングですが、Blenderで心のハードルが下がって良かったです。3Dモデルは撮りたい絵のイマジネーションがたくさん湧いてくるので、カメラワークを工夫したくなり、結果的にタイムラインやキーイングをがんばれたので良かったです。

次につなげるための反省点と課題

一番の反省点と課題点は、ツギハギだらけの3Dセットになってしまい、部分部分を切り出して撮影した点です。サッカーボールが転がるシーンを収めるための、フィールドコートを丸ごと作っていなかったので、シーンを撮影するために部分部分でしか制作していませんでした。

3Dモデルを作る前に、まずどんなセットを組むのか全体感を考えるべきだったし、どこから撮っても破綻しないように3Dセットを作るべきでした。終盤は、撮れる角度や破綻のない角度から撮るにはどうしたらいいかみたいな作業に四苦八苦してしまったためです。

失敗の要因は、まずサッカーボールという「点」から作ったことにあります。あらためて考えるとYoutubeの作例は完成形としてどれも良くできていて、どこから撮影しても破綻がないと思います。

芝生のパーティクルも、撮影するにつれ広さが足りずに、コピーインスタンスで増やしました。しかし元になる芝生の広さを十分確保していなかったために、コピーインスタンスの量が増え、レンダリングが重くなるなど効率的ではありませんでした。

Blenderで動画用の3D素材を作る際は、撮影に必要なぶんのエリアを事前に設計してから、制作に着手する必要があると感じました。

制作で得られた経験

Unityで動画を作っていた時は、UnityAssetStoreからシーンのセットを買ってカスタマイズして撮影していました。しかし、自分が対応できる範囲はテクスチャ画像の張替え程度でした。

今回のようにゼロからBlenderで撮影環境を作ってみたことで、テックイベントのイメージに寄せたシーンを作れたのは良い経験になりました。今後、Unityで3Dセットを活用する時も、シェーダーやマテリアルのカスタマイズや、Blenderで3Dモデルを作ってUnityにインポートなどもっとカスタマイズできる気がしました。

テックイベントも良い反響だった

当日は、YouTube Live配信も担当していたので、配信卓から会場に来てくれた学生や社会人の方々の、楽しそうな表情を見ることができて印象的でした。

また、YouTubeでライブ視聴してくれた方もたくさんいて、Twitterのハッシュタグも盛り上がっていたので、良い結果になりました。世の中的にもサテライトオフィスなどが各地に増えているようなので、全国的にもリアルで勉強/交流できるテックイベントの機会が徐々に増えていったらいいなと思いました。

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