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『北斗の拳』も『ドラゴンボール』も読んでません

 先週まで頼まれ仕事の企画が大詰めを迎えていたのですが、原作のないオリジナル作品の立ち上げは中心人物の考え方がすべてで、それに見合ったパーツを手探りでクリエイターやリサーチャーが作り上げて脚本にまでもっていかなければならないという苦労があります。

 今回チーム全員が日本人だったので、少しは楽なのかなと思ったのですが、日本人のクリエイターの文脈ってかなりテンプレ化してしまっている、よく言えば阿吽の呼吸が通じる、悪く言えば非常に硬直化して日本人ウケしかしないという問題を抱えやすいというのはあるんですよね。

 例えば、ある場面の描写で「ここはガンダムの何とかいうキャラがあの場面で…」「あー、そういうのね」みたいな話し合いが起きることがあるのですが、ガンダムを観ていない私からすればサッパリなわけです。何それ。

 あ、正確に言えば、30年以上前、お袋に連れられてガンダム初代の劇場版は観ました。でも固有名詞を言われても「ブライトさん? そんなのがいたな」というレベルです。あるいは、ネットでブライトさんが主人公を殴るgifか何かがあって、そこの解説文を見て知識として知る、みたいな。

 そういう点では、みな私のような世代は「ジャンプ黄金期だろ」「知ってろよ」と言われるんですけど、観てないものは観てないし、読まない漫画はまったく読んでない。読んでいたのは『Dr.スランプ』と『うる星やつら』ぐらいでしょうか。先方が言うタイトルについて適当に話し合わせたところで、後から「そうじゃない」と言われるぐらいなら最初から「読んでないので分かりません」というのが誠実な態度だと私は思うので、結構堂々と「え、私、ドラゴンボールとか例に出されていても知らないので、スクリプト書きで脚本案ください」と言います。

 まあ、みんな忙しいとテンパってるから「山本さん、そんなのも知らないのかよ」とか「この仕事、向いてないんじゃない」などと言われます。もちろん、私はその場では流すけど全部メモって後から「あなた、あのときこういうこと言いましたよね」と裁判起こしたりするわけなんですが、みんな同じような体験をし、似たような作品を見て、ある種のタコツボに入っているから大口の作品で日本人にしか共感されない、ある意味で独りよがりな作品になってしまうのではないか、と思います。

 逆に、私などはロシア文学や少し古いアメリカ文学を読み、実録ものの戦争のネタが好きで、また少数民族ではありますが古いPCゲームやシミュレーションゲームが好きです。『Wizardry』や『Ultima』は概ねやり遂げていますし、オンラインゲーム初期の傑作『Ultima Online(UO)』や初代『Ever Quest(EQ)』は相当やりました。

 で、PCゲームをやっていた、というと、なぜかクリエイターの間では古いエロゲー(18禁ゲーム)の話を振られるのですが、私はまtっっったくエロゲーやってません。知りません。『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』『Mother』シリーズもやってません。例で出されても知らないっス。

 だから、日本人相手でも、外国人でも、必ず自分はこういうクリエイションをしたいので、こういう表現にしてくださいとか、こんなテーマでキャラクターの造詣を考えてくださいとか細かく相談することにしています。それが良いか悪いかは分かりませんが、リサーチャーの仕事というのはその場面で登場人物が史実ではどういう行動をとったのか、その原因は何で、どういう価値観が根底にあったのかというのを伝えてストーリーに深みを持たせたり、違和感を持たれないようにすることが重要なので、阿吽の呼吸というのは存在しないと思うのです。

 最近では、韓国や中国の仕事が増えたというのもあるのですが、共有している体験どころか、作品が視聴者に与える影響や根底にある価値観そのものが異なる場合に、下手をすると兄弟間の情感や、上司部下の意思疎通の方法論そのものが異なっていたりします。とにかく多くの人に訴求しようとするならば、派手なドンパチをやり、展開を特に速くして、最初のほうで起きていたことを忘れてしまうような作りにするほうがいいのかもしれませんけど、それだと観終わった後楽しかったとしてもその後「あれってどういうストーリーだったっけ?」と思い出せないようなものになってしまうのではないか、という怖れもあります。

 多国籍チームであろうが日本人中心だろうが、なるだけ「こういう表現にしたい」「これを伝えたい」というのは具体的に表現内容に落として、これだ、これじゃないというのをちゃんと議論したほうが、モノ作りとしては良いのではないかと最近は強く思っているんですがねえ。

 つるかめつるかめ。

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神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント