石破茂さんとマスコミ自民党批判問題
石破茂さんがいきなり発言内容の修正に追い込まれていて非常にダサいのですが、30分ほどまとまった移動時間ができたので思うところを書いてみます。
石破茂さんと言えば、国民に尋ねる「次の総理」ではランキング上位にいる割に、今回「最後の戦い」とご自身で仰るほどに出ては負けを繰り返してこられた噛ませ犬的ポジションについているのが印象的です。
しかしながら、各種調査でも明らかなとおり、石破茂さん支持というのはもっぱら非自民党支持層によるもので、自民党支持層に限定してランキングを見ると、一つの閾値となる25%を大きく割り込み3位以下に低迷することが多くあります。
この理由は、第二次安倍政権以降特に自民党批判や政権批判をしたいマスコミにおいて、彼らの批判を成立させるためのアリバイとして石破茂さんにインタビューを取りに行き、批判の正当性を担保するために簡単に担ぎ出される石破茂さんの登場機会が多いため、反自民の読者が多いマスコミ経由で支持層が広がっている側面があります。
今回も、自民党支持率を大きく低下させる理由となった政治とカネの問題において、清和研究会議員を暗黙の標的として「早期に行われる解散総選挙において、裏金議員が出馬しても自民党が公認しない」と思わせるような発言をしました。これは、岸田文雄政権において今年4月上旬に関係議員の党内処分を行ったにもかかわらず、仮に石破茂さんが新総裁になった場合に追加処分を行う可能性を示唆したもので、挙党一致で自民党が信頼回復するために出直し総裁選を行う形となった今回の争点においては「同僚議員を実質的に切り捨てる石破茂さんのあり方」が問題になりますから、当然大騒ぎになるでしょう。
確かに国民からすれば政治とカネの問題は政治不信に直結し自民党支持率を下げるイシューであることは間違いなく、その原因・根源となった派閥政治からの脱却を宣言して自ら身を引いた岸田文雄さんのご英断を踏み越え、自由民主党を組織的に割る可能性のある争点を自分からブチ込んできたことになりますから、ただでさえ乏しい自民党内の石破茂さんへの人望がさらに失われると危惧されるのも仕方ないことだと言えます。
で、前回石破茂さんが総裁選に出馬を見込みながらも無理であった背景には、まあまあ善戦した河野太郎さんを勝たせるために菅義偉さん後継の仕込みで「小石河連合」なるあまり意味のない枠組みに乗っかった面もあるかもしれないし、他方で、今回石破茂さんが総裁選出馬がつつがなくできたとしても言われるほどの党員票は取れないのではないかとも見られています。少なくとも、各地域で都道府県連にて取りまとめられている党員票の動向を見る限りでは、石破茂さんは冴えないなあという印象があります。
それでも石破茂さんは党員票は一定以上確保するとは思いますが、世評で出ているような数字には届かないのではないかとも思われます。というのも、前述の通り石破茂さんへの声望はもっぱら反自民の人たちによるものであって、もちろん石破茂さんは清廉なのかもしれないし、実際そうであるとしても、現代政治において組織を率いるにあたってはトップひとりがクリーンであったとしてもそこまで価値のあることではないし、また、そうでない議員を公認から外すことを示唆するような発言をする人物が組織を率いることもむつかしいでしょう。
石破茂さんを閣僚に取り込もうという動きもあるかどうかいまのところはっきりしませんが、敗勢を悟ったタイミングでは石破茂さんが自ら降りるなどして誰か政策的に、あるいは党運営方針の近い候補者に合流して支援に回る、なんて気の利いたことは石破茂さんはできないでしょう。あるいは、第一回目の投票で負けた後で、決選投票のどちらかの支持を打ち出す代わりに自身や推薦してくれた20名の議員の善処とバーターにするなんてこともしないと思われます。
そういう器用な人ではないからこそ、石破茂さんは党内で正論を言っては批判されて干され続けたわけだし、これはこれで石破茂さんのような人でも居ていい自由民主党という組織の懐の深さを表すものだとも言えますが、権力闘争の観点からすれば単に本人が無能だというだけでなく、石破茂さんは実質的に一回目の投票で党員票を割ることで小泉進次郎さんの過半数獲得での即総裁当選の芽を摘む存在であるとも言えます。
単純に、小泉進次郎さん陣営からすれば、ポスト保証してでも石破茂さんの出馬を諦めさせるべきであって、しかし小泉陣営もまたそういう気の利いたことのできる存在が菅義偉さんしかおらず、脳梗塞の影響で本人も考えていることはあっても言葉が変で何を言っているんだか分からないという事態であるため不幸だなあとも思うわけです。
逆に、小泉進次郎さんが一発当選しないのであれば他候補は20名の推薦人が集まれば降りる必要もなくなりますから、決選投票に残れる可能性が高いと考えられる茂木敏充さんや小林鷹之さんら小泉対抗に寄る交渉をリスクなく済ませておけるという便利な存在が石破茂さんだという話になります。また、石破茂さんが攪乱する限り、上川陽子さんや林芳正さん、河野太郎さん、加藤勝信さんにも決選投票に小泉対抗としてコマを進めあっれる目が残せることになります。
これはあくまで「43歳の小泉進次郎さんに総裁になられうっかり長期政権となると、自分が総理になる可能性が失われる」とか「総裁選が盛り上がり自民党支持率も回復している中で、ここで小泉さんのような切り札を登板させる必要があるのか」などといった、別の力学もあるからポスト保証のバーター込みで小泉対抗に議員票が集まる可能性を考えるべきだと思います。