【映画】『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(100まんドルのみちしるべ)』を観に行った感想(後半ややネタバレあり:追記あり)
戦争で母親を失った平和主義者が、人でごった返す観光地へセスナに乗せた大型爆弾を落としに行く映画があるというので『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(100まんドルのみちしるべ)』ってのを家族で観に行ってきました。
本当はオッペンハイマーを観に行くつもりだったんですが、どうしてこうなったんでしょう。
最終的に探しているお宝の場所は普通に函館市や北海道管区の自衛隊が把握してそうな場所でしたし、壮大な迷惑をかけてまでみんなで探し回るほどのものでもなかったのかなと思ったりもしましたが、そこは映画ですから細かいことを気にせず楽しんでおりました。
それにしても、最近の函館市は外国人観光客も増えて大変そうだなと思ってたら街中でカーチェイスや銃撃戦が頻発し、抜き身の刀を持ってうろうろする青少年が狼藉を働くなど治安の悪さが気になってなりません。爆弾積んだセスナとかどこに駐機してたんでしょうか。ペイロード足りてる?
作中、登場人物が携帯電話使いまくってて犯人も謎の追跡者たちも堂々と位置情報垂れ流しながらオープンリーチで鬼ごっこをしているあたりに現代社会の侘び寂びを感じました。おまえ隠匿するつもりならスマホの電池抜いとけよ。
気になったのは、どっちの陣営にも財閥とか大金持ちとか死の商人とかが出入りしていて物騒な割に、大事なところは全部肉弾戦であり、最終的にはそれこそシミュレーションでやれと言いたくなるような熱気球まで持ち出して観測高度を目測で確認しているところでした。仕組みが分かれば秒で解析可能なことであるし、あの近くにそれがあるのはみんな百も承知だったんじゃないのかと思いきや、あれほど日頃推理力を売りにしている皆さんが気球打ち上げてみるまで気づかないってのはいかがしたものかと見物していて頭を抱えました。
というか、アレがつばから一定の目の高さで見下ろしたとき五稜郭の大きさと一致する高度なんてものは、小学生が中学受験でやる比の問題でしかなく、方角も分かっているわけですから同定できる高さにある建造物なんてひとつしかないじゃんかと思うわけであります。6本の銘刀へんなつばの形が五稜郭を意味するならば、6本集める必要すらありません。角がハッキリしている一本あれば、秒で分かってしまいます。五稜郭も、お堀が燃える必要もありません。そんなものを調べるためだけに東京からわざわざアガサ教授と少年探偵団の皆さんに来函でお運びいただく必要はなかったのではないか。ちゃんと推理しろ。そう思いながらコーラ飲んでました。
推理力はあるのかもしれないけど、学力がないんじゃないかと思うんですよね。まともに勉強してこなかった人たちではないのか、という。
また、函館街地のいろんなところで皆さんが斬り合いをしていて、若くて元気なことは素晴らしいのだなあという感慨を抱きました。ありあまるエネルギーがぶつかり合い、この素晴らしい作品に花を添えるのは良いことだとも思います。一方で、上空で斬り合うのはいささか危険ではないかとも感じましたし、そこまでのリスクを張るのは割に合わないと思います。危ないからやめましょう。
結論からすると、真の謎はあのジジイの人生は何だったのかです。
正確には、すべてを分かった風のジジイが最終局面で自らが気づいた通り「あのジジイの人生は何だったのか」が本作品における紛れもない大テーマであり、観る者に対して「無駄な人生も世にはあるのだ」という残念で残酷な真理を否応なく突き付けてくれます。使命があると思って我慢してきたけど、蓋を開けたらすべてが勘違いだったっていう、それでいて世間一般でいう胸糞映画ではなく、子どもたちも親御さんたちもいっぱい観ている映画においてこれなのです。これならば、同じく勘違いに基づく依頼で命を落とした弁護士のほうが、その結末に絡まなかった分まだ幸せだったかもしれません。これは、そもそも登場から最後まで観客の誰一人としてジジイには感情移入していなかったからこそ可能な技だったんだろうと思うと、同じ時代を生きる者としての悲哀すら感じさせます。
結果的に、登場人物すべてが本件の与太話に盛大に振り回されるのですが、冒頭で弁護士が死んで話が転がり始め、あれだけのことが起きておきながら、実は、実質的に死者が弁護士一人で済んで良かったというべきかどうか。冷静に考えて我が帝国がそんな戦況を一変させるような秘密兵器を本当に持っていたとするならば先の大戦は我が方の大勝利で終わっていたはずなので、みんなもっと真面目にやれよと感じた次第です。
面白かったので興味関心のある方は是非映画館に足を運んでいただけると幸いです。よろしくお願い申し上げます。
画像はAIが考えた『世間的に著名な少年探偵がすぐ目の前に回答があるのに回りくどく操作を重ねた結果、周りで無駄に爆発したり銃撃戦が起きたりして誰一人幸せにならない一部始終』です。
(追記 18:02)
作中、医学部生なのに学校にも行かずジジイのところに居候して事実上ニートとなり、鞘をすり替えられていたにも関わらず気づかず、登場人物に勝手に恋心を抱くような描写があり、しかしセスナを運行・操縦する資格は持っていて銃刀法違反を繰り返す無能について、なぜもっと触れないのかというリクエストがありました。
まああれは毎年なんらか放送しなければならないシリーズ映画に特有の劇場版ゲストキャラなのであって、その整合性を深く考えたらいろいろ成立しないと思うのでどうでもいいと思っておりますが問題は怪盗キッドのほうです。
私は最近のコナン映画しかまともに観ていませんが、作中の人物をトレードさせる混乱キャラとしては古き良きルパン三世と銭形警部みたいなノリを再現しようとしているんだと思います。ただ、これはコナンだけが悪いわけではありませんが、登場人物でイケてる人たちは大体似たような顔であるため、現実社会と比べて変装という技法の扱いが若干異なるのではないかとも思います。
また、今回の表向きのテーマがこの怪盗キッドの正体に迫る的な文言があった割に、取ってつけたような従兄設定が出てきただけで、どすえ一丁で雑な京都弁を喋るうえ函館署にも何の背景説明もなく会議室に座ってたため、これはもう完全な北海道警の落ち度を示すものであってそれ以外の何物でもないのではないかと思っています。
函館市には基地外しか住んでないのか心配になる描写も少なくなく、五稜郭ネタであるならばもっと幕末感を醸して欲しかった以上の問題点は感じませんでした。よろしくお願いします。