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劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』を家族で観た感想(ネタバレなし)

 23年は子どもが映画館で映画を観ることを愉しみにするようになってから俄然家族つるんで映画館に行くようになりまして。

 私の50年の人生で、一番映画を観ている時期なんじゃないでしょうか。そもそもコンテンツ投資や制作の仕事をしていても、手がけている作品ですらなるだけ観ないようにしているんですけど家族が「行きたい」となれば話は別であります。3歳の長女がドラえもんにハマり、長男次男が中学に上がって多感な時期にいろんな刺激を得るのは良いんじゃないということで、なんというかこれはこれで良いのかなと思ったり。

 で、学友が「コナンはまあまあ面白かった」という曖昧な評価をしていたとのことなので、家族で『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』も観に行ってきました。

 これ、情報法クラスタ総立ちの展開でやんすね。

 舞台装置がAIによる老若認証ですよ老若認証。いや、もう実用可能なレベルで実現しちゃってると思うんですが、これ欧州のAI規則が割と強力な形で制限しようとやってる矢先にユーロポールが犯罪捜査に活用ですと。

 これね、もう立正大学データサイエンス学部のデータサイエンス昔話赤ずきんちゃんで炎上したネタじゃないですか。コナンさん、まず「お前らが違法だ!」ってやってくださいよ。

 また、全世界の警察が保有している監視カメラの画像を国際的に集中管理する仕組みになっててカオスです。違法です。いや、どこぞの国の情報機関がやってるじゃないかと言われることもあるかもしれませんが、EUでは特に刑事データ保護指令があるのでそもそもEU圏外に持ち出せませんし、他国の情報とクロスさせるのは「混ぜるな危険」のレベルで国際問題となりますのでなかなかむつかしいのではないかと思いました。

 さらに、八丈島のごく近海にフロート型海洋施設を海中内に作り、潮力発電で世界中からの監視カメラの映像を集めるという舞台装置だったわけですけど、潮の流れで発電しているだけでは発電量足りませんし、回線容量も全然間に合いませんから。違法だし不可能だしどうなってるの。

 でもそこはアニメだからグッと我慢… と思いつつ、全編を通じて頭の片隅にずっと「でもこれ違法だよな」とか「デスクプロセスで映像改竄されちゃう仕様はまずいだろ」とか「バックドアでセキュリティ破るにしてもどうやって」などのツッコミが漂っていて、子どもたちが熱心に観ている横で呆然としていました。

 何しろ舞台となっている八丈島(八丈町)、海上自衛隊のアレがある場所であって、その目と鼻の先に露出したスクリューぶん回す潜水艦が派手にぶっとい魚雷をぶっ放しており、何してんのお前と思います。いや、何してんのという批判の矛先はむしろ海上自衛隊に向けられかねません。あんな出所不明の潜水艦が堂々と我が国領海内に来たら不審船ですし、組織とやら、肝が据わってるなという印象です。しかも乗り付けたヘリで空から合流してるじゃないですか。どこから飛び立ったのそのヘリ。航続距離は?

 組織と言えば、なんですか、コナンさんを子どもにした不届き物の集まりなんですが、今回の主人公からして超優秀じゃないですか。コードネームがピンガさんだそうですが、私はずっとその名前から、ペンギンのキャラクター「ピングー」の妹のほうの「ピンガ」ちゃんだとイメージしていて途中から混乱しました。

 昔次男にピンガちゃんのハンドタオル買ってあげた思い出が蘇ります。


ワイからすればピンガといえばこちら。かわいい

 で、そういう八丈島沖の密室でもある施設で裏切者は誰だってやっとったわけですが、ここで役職付きのエンジニアも含めて施設職員に要員を送り込むことができるだけで、一生飯が食えるレベルで一流エージェントだと思うわけです。言うなれば、この施設の合法性は置くにせよ利用価値があることは間違いない施設で枢要な機密に触れるポジションにつけるだけで任務の八割は達成したも同然であり、あとは「痕跡を残さず取得した情報を適切な部門に安全に渡せるか」になります。

 こういう潜入をやるには苦労を強いられるので、本来であればすでにそういう役職に就いている人に接触して買収するほうが手っ取り早く安全なのですが、本作ではちょっとイカれた感じのピンガさんがどうやら正面から採用面接を突破して潜り込むことに成功していたようです。うーん、正直こういうところに要員をダイレクトに送り込むのは15年ぐらいかけてやる仕事で、それでも失敗して死んじゃう人もいることを考えると穏やかに、丁寧に物事を進める必要があると思うのですが…。

 怖ろしいのは二つあって、ひとつが「バックアップ要員がまったく見当たらないこと」、もうひとつが「くだらない組織内の昇進とかの理由で多額のコストと年月をかけて浸透した工作員が見捨てられてしまうこと」です。もちろん、作中の時間の都合でバックアップに汗をかく組織構成員の皆さんの奮闘は割愛されてしまっていたのかもしれませんが、浸透だけでなくデータ改竄からバックドア維持までやり遂げたピンガさんの能力の高さには驚きを通り越して尊敬の念すら覚えます。人間、やればできるのだという言葉の重みを噛み締めざるを得ません。

 通常、そこまで浸透先に同化して、なんとなれば暗殺までやってのけてしまうエージェントを維持するためには相当なコストと時間がかかるのは述べた通りです。したがって、要員の安全とその後のアクセス性維持のためにも極力保護するべきものなのですが、この組織の皆さんは割とその辺のことはお構いなしにお互い額に銃突きつけたりぶん殴ったりしています。やめなよ。人は財産なんだぞ。

 なお、組織の秘密が詰まった玉手箱のような潜水艦、爆破はされてましたけどあんなの秘密裡に全力サルベージですね。日本サルヴェージ社の出番が来た感じがします。それこそ日米で連携してやるものになってくると思うのですが、どうなんでしょうか。

 いずれにせよ、我が国領海内にあんなスクリュー丸出しの旧式潜水艦の闖入をされた時点で最大の落ち度は海上自衛隊であるということで自分の中では納得しました。
 とても面白い映画でした。皆さんもぜひ劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』をご堪能ください。

 画像はAIが考えた劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』のタイトルビジュアルです。


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山本一郎(やまもといちろう)
神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント