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池田信夫が流している与太話について @ikedanob

 池田信夫がまた与太話を書いているとのことなので見物に行きました。

 また、割と身近な人もこれを見て「なるほど」とか書いていたので、それはさすがにちょっとなと思いますので、事実関係を指摘したいと思います。

 まず、池田信夫の書いている内容は出典を明記すべきで、状況に関する記述はこれは健康保険組合連合会の有志面々が取りまとめた「医療保険制度における財政調整と財源負担に関する調査研究 報告書(概要)」の丸写しにも近い内容です。もっとも、状況や制度的経緯の説明は被るのは致し方ないところはありますが、池田信夫は丸写しなら丸写しと書きましょう。

https://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa19_07.pdf

 さて、いきなり間違ってるのがタイトルで、『老人医療の「支度金」をやめれば健康保険料半分に減らせる』です。実際には

老人医療をやめれば健康保険料は2割以下になる

協会けんぽ、組合健保から支援金をやめても後期高齢者医療の支給水準が下がらなければ意味がない

です。ただし、国民皆保険制度を含めた我が国の社会保障の仕組みは国民同士の相互扶助を目的としたセーフティネットを構築することに他なりませんから、高齢者への医療をぶん投げるということは国民の老後の備えがなくなることを意味しますし、現実的ではありません。

 で、池田信夫の記事では厚労省のグラフがもっともらしく掲げられていますが、池田信夫がこのグラフから言うべきことは「老人医療に俺たちの協会けんぽなどのカネが使われてしまっている」のではなく、「市町村国保が保険制度として成り立っていない」ことに尽きます。

 池田信夫が持ってきたグラフで言うと右から二番目です。歳入の青が保険料収入、濃いピンクが給付費の総額で、さらにそこから後期高齢者医療に後期支援金が突っ込まれていますが、これは単純に市町村国保が成り立っていないことを示すグラフであって、すでに過半が公費で突っ込まれている後期高齢者医療をどうのこうの言うグラフじゃありません。

 ついでに言うと協会けんぽも足が出始めたため公費が突っ込まれ始めており、ただし、これだと皆保険制度を支えるすべての枠組みに公費を投入しないといかんという話になるので、保険料水準統一加速化プランなるものが先月策定されて、自治体間負担を公平にすんぞという方針が示されております。議論としては2018年からやってるもので、厚生行政も池田信夫ほど馬鹿ではなく、また池田信夫はこの辺の議論のキャッチアップをしてないんだろうなあ、思い込みと古い知識で社会保障を語っているのだなあという思いを新たにするところです。

https://www.mhlw.go.jp/content/001158236.pdf

 もちろん、こんな改革案では生ぬるい、もっと社会保険料を下げろと財務省に財政審資料で障碍者福祉を中心に地域差(自治体差)がデカすぎるだろバカタレと可愛がられているのが本件です。ですよねー。

 正直どうにかしないといけないのですが、妙案もなくどうにもなりません。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20231120/04.pdf

 なもんで、協会けんぽや組合健保から高齢者医療向け支援の数字がこうだと並べたところで池田信夫がタイトルで言ってるような結論にはミリも到達しないのであって、事実関係で言うと「私らが支払っている社会保険料は、高齢者医療を全額ぶん投げれば8割ぐらい減るのだが、そんなものは皆保険制度じゃなくなるし、時間をかけて法改正しないといけないんだから、そんなことをいま議論したって意味がねえだろ」ということです。

 また、いろんな反論が出るだろうから先回りして書いておくと、じゃあなんで各種保険の仕組みがこんなに痛んで公費投入するんやという話はよく出ます。これはもう地方の人口減少や過度な高齢化で保険料を納めるまともな働き手の割合が減ってしまい、ぜい弱な保険制度の状態では地域医療が持たないからに他なりません。さらに、企業年金も協会けんぽも高齢化が進んでセーフティネットとしての機能を維持するためには欠損資金分を公費負担にしなければならなくなった、という経緯がありまぁす。

 さらに、後期高齢者向け医療の支援金を減らせばいいじゃないかとなりますが、これだと結局具体的にいくらにすんのかというシーリングが決まらないと公費負担が増えるだけですので、今度は財源不足になります。後期高齢者向けの医療費を削るのだというと、いままさに問題になっている診療報酬の引き下げぐらいしかやれることが当面はなく、高齢者にも窓口3割負担から5割負担だよといっても26年度ぐらいにならないと政治判断しても実現しないんじゃないかと思うので、池田信夫が騒いでもあまり価値はありません。そんなことは旧民主党政権時代から分かっていた話です。

 そして、健康保険法上も組合健保からの高齢者支援金を制度的にやめろとなると政治判断をしたうえで法律改正になりますから、これもいますぐは無理です。制度的にやめても公費負担になりますから以下同文。

 主に欠損を抱えている地方自治体の市町村健保やめちまえよという話も出るかもしれませんが、これをやめると地方の医療は本当に死んでしまいますし、ついでに自治体財政も直撃して自治体も破綻します。自治体が医療体制を保障する義務があるからです。公費医療負担制度の細目については適当にこの辺を見てください。この中にはお前らの好きな児童福祉法関連や措置入院、精神通院医療など広い意味での基地外対応も含まれたうえで、さらに痴呆症などで入院する高齢者も含まれて社会保険料を地方でドカ食いし、それを支える保険料納付者が地方で少ないので大欠損を抱えているという図式です。

 「これはもう制度的にもたないだろ」と池田信夫が言うのは表現の自由です。まあ、ある程度は私も同意します。しかし、国民皆保険制度は日本が誇る社会保障の旗艦であり、どういう形かであれ、必要なときに必要な人がきちんと医療にアクセスできる権利を持っていて、それが一定の達成ができるというのは本当に素晴らしいことなのです。

 ただ、老人医療への支援金をやめれば社会保険料は半分になるというのは嘘です。普通に公費投入をされるだけですし、現実的ではありません。

 この辺の話はちょいちょい記事にしているので興味のある方は併せて読んでおいていただければとも思います。

 画像はAIが考えた『極論を断言すれば客がついてくる老害が意味のない議論を大声でして周りの人たちが首をひねっている一部始終』です。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント