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「熊本産アサリ」産地偽装問題と北朝鮮

 JNNが「3年間の取材で明らかになった」と報じていましたが、実際には05年に北朝鮮産アサリを5業者転売の果てに中国産、韓国産などと産地替えして最終的に熊本産として販売した経緯について農林水産省が指導をし、当時、読売新聞などが報じています。

 バックグラウンドとしては、もちろん「北朝鮮産」は取り扱いができませんし、「中国産」「韓国産」は消費者が忌避するという理由で「熊本産」に産地替えをしたという営業上の理由だけでなく、本質は熊本とは本来あまり関係がない北朝鮮系商社や事業者などが介在していて、それなりに問題案件ではあります。経済制裁逃れのために外貨獲得のための輸出物としてアサリや一部海産物を他国船籍と詐称して日本の港に水揚げをしてきた経緯もあり、正直言えば昔からある話だったといえます。

 北朝鮮産アサリの産地不正表示問題で、農林水産省が九州の2業者に改善を指示したアサリは、輸入後の流通過程で五つの業者を経由する間に、産地表示が中国産から無表示、さらに国産へと変わっていったことが、同省の調査や関係者の話で分かった。  北朝鮮産アサリについては、昨年1年間で約3万2000トンが輸入されながら、店頭などで「北朝鮮産」がほとんど見られない状況が続いている。同省は、全国で貝類の流通や小売りにかかわっている19の業界団体に対し、輸入アサリの産地の適正表示を要請した。  農水省は1月からアサリの産地表示調査を全国で実施。福岡県久留米市の小売店で「熊本産砂ヌキアサリ」と表示された産地不明のアサリが見つかったことから、同省が流通ルートをさかのぼって調べた。  その結果、問題のアサリは、民間輸入業者「福岡県魚市場」(福岡市)が北朝鮮から中国の業者を介して輸入、2月までの約1年2か月間に計約8000トンを仕入れ、うち1000トン余が卸売業者(福岡県)に販売されたことが分かった。  その際、「海州(ヘジュ)」など北朝鮮の地名が産地として表示されていたが、卸売業者は、鮮度回復や出荷調整を行う蓄養業者(同)に対し、これを「中国産」として引き渡していたことも判明した。  アサリはその後、蓄養業者から産地表示のない状態で別の卸売業者(同)に渡り、さらに複数の小売業者に販売された。  このうち久留米市の小売店を経営する「あんくるふじや」(佐賀市)が、一部の中国産アサリとともに計1280キロを「熊本産」として売っていた。日本農林規格法(JAS法)に基づく適正な国名表記は、どの過程にも見られなかった。  福岡県魚市場は、読売新聞の取材に「北朝鮮産アサリに関しては、地名を表示して商談をしている。国名を併記すべきだったが、(北朝鮮産であることを)隠してはいない」と説明。  同社からアサリを買った卸売業者は、農水省などの調査に「北朝鮮産と思ったが、納入先の蓄養業者に中国産とするよう言われた」と話し、蓄養業者は「中国産と思った」と説明しているという。  また、蓄養業者から仕入れた卸売業者は取材に対し、「中国産として売った」と話すが、この業者からアサリを仕入れたあんくるふじやは、「仕入れの時に『中国産だが、熊本県で養殖したから熊本産でいい』と説明され、信じた」と話し、説明は食い違っている。  こうした流れに対し、東京・築地市場の卸売業者は「原産国名の表記がない時点でおかしいと思うべきだ。取引全体がずさんだ」と指摘している。同省は1日、福岡県魚市場とあんくるふじやに改善を指示した。  北朝鮮産アサリは、輸入後に複数の卸売業者が介在したり、出荷調整などで国内の干潟にいったん蓄養したりするなど、今回のような流通ルートをたどることが多く、不正表示がどの段階で行われたかは把握しづらい。  アサリの昨年の全輸入量のうち「福岡県魚市場」が輸入したのは約2割で、今回判明したルートは一部に過ぎないのが実情だ。  ◆アサリの産地表示調査=農水省が全国の約1300の小売店で1月15日から実施。約1700の商品について、仕入れ伝票と突き合わせるなどして、アサリの産地表示が適正かどうかを調べた。その結果、アサリの国内消費量の約4割を占めるはずの北朝鮮産アサリと表示されたものは、2商品しか見つからなかった。 (読売新聞)

 ここで問題になるのは、熊本産とされたアサリの、全出荷量の97%が外国産だったという実態が、05年にすでに問題になっていたにもかかわらず、現在においてもなお、より問題が悪くなる形で出てきてしまったのかという点です。

 さらには、ウナギの件も出ましたが、ウナギもまた、過去の産地偽装が問題視され、今回も農水省農政局が大々的に追跡作戦をやるぞという話が出ました。ご苦労なことです。

 ただ、岸田文雄さんの官邸が経済安全保障だサプライチェーンがどうだと言っている横で、口に入るモノのトレーサビリティも満足にされないまま産地偽装で外国産物品が容赦なく入ってきていて、おそらく食料品輸入のインボイスとウナギやアサリの国内流通の総量が全然違っていても誰も気づかないふりをしてきた経緯については、その全容解明を農水省に任せていては可哀想です。

 そもそもJAS法が改正になり、産地を明示せよという法律ができたことと、国産信奉が日本の消費者にある中で、北朝鮮産のアサリが中国産を偽装して入国してしまうのはもちろん北朝鮮への経済制裁と北朝鮮系商社との直接取引がなかなか困難(なはず)だからです。ところが、肝心の三角貿易の経由地である中国は中国で河川・海洋汚染で干潟や汽水帯の水質が極端に悪くなり、アサリの生育どころか重金属を吸い込んでしまうので検疫(貝毒検査)を通らないため、中国発の貿易船でアサリの入ったコンテナを降ろさず、インボイスだけ書き換えて福岡港へ荷出しするのが常態化しとるわけですよ。もうずーっとやっとるんだと思います。

 問題は、その貝毒検査を通してまでアサリをなぜ大量に流通させるかってことですよ。安いアサリを北朝鮮から採ってきて、豆満江経由で福岡に入れ、熊本に搬送してばら撒いて、漁獲する。これって本当に安いと思います? 実際には、貝毒検査を通すにあたり、アサリ以外の別の物品も「並行輸入」しているからアサリを安く出荷してでも事業を維持して輸入量を確保する必要があったんじゃないですかね?

 JNNも3年取材頑張ったのであればそのあたりのこともよく承知しているはずで、具体的な事業者名とバックグラウンドについてはちゃんと報じたほうがいいと思います。また、日本と北朝鮮とは国交がない状態のまま日本で暮らしている北朝鮮籍の人たちの立場も考えたうえで、ただの産地偽装ですね、だめですねという話ではなく、どういう解決の方向性にするかはそろそろ政治的にきちんと決断をして処置をしないといけないことなんじゃないのかなとも感じるところです。

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神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント