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短編小説集

99
私の書き下ろした短編をまとめたものになります。
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#恋愛

無限交差

「ねぇ、どうして私じゃないの?」 私は彼に必死に問いかけても、ただただ俯くばかりで、私の…

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【短編小説】時織りの手紙

 祖父が亡くなった。  つい二週間前のことだ。  あまりの突然の訃報に暁人は驚き、納骨が…

30

時織りの手紙(6)

令和3年9月1日 この日、暁人は珍しく朝7時に起床した。 夏休み中の大学生と言えば、お昼ごろ…

19

【短編小説】無拍子な春

僕には、人の波が視える。 見えるのではなく、視える。 感じるといったほうが近いのかもしれな…

28

時織りの手紙(5)

※第一話はこちらから 大正12年8月20日――― 石森玲子は一人、自室で膝を落として、唖然と…

18

時織りの手紙(4)

※第一話はこちらか 令和3年8月12日――― 朝目が覚めると、暁人はすぐさま手紙箱の蓋を開け…

14

時織りの手紙(3)

※第一話はこちらから すでに白く輝く太陽は、東京の真上を照らしている。 時刻は14時20分。 暁人はあれから二度寝をしてしまい、起きた頃にはすっかりとお昼を過ぎてしまっていた。 ショルダーバッグを肩にかけ、真夏の東京へと出かけた。 埼京線に乗り、池袋を経由して東京メトロへと乗り継ぐ。 到着したのは日本橋駅である。 暁人はレターセットなど持っておらず、それを買いに行くためにわざわざ日本橋高山屋へと向かった。 高山屋5階の文具売り場へ立ち寄り、500円ほどのレターセットを購入

時織りの手紙(2)

※第一話はこちらから 布団にごろりと転がると、疲れがどっと来たらしく、暁人はうーと唸りな…

23

時織りの手紙(1)

祖父が亡くなった。 つい二週間前のことだ。 あまりの突然の訃報に暁人は驚き、納骨が終って…

38

水冷に騒ぐ、夏の秘密基地。

「ねぇーってば!こっちおいでよ!」 夏帆が川の浅瀬で、僕と純也を呼んだ。 純也は「行こう…

37

泥の雨に咲く、名もなき花の名は

時間なんて、無限にあるものだと思っていた。 未来なんて、永遠に続くものだと思っていた。 …

21

静 霧一『Pale Memories』

きっとこれは夢だ。 あなたの「別れよう」という言葉が、今も耳に残響する。 私は思わず耳を塞…

27

無音の叫声、惨めな独白

仕事終わりに独り、電車から見える夜の景色を、私は何も考えずに眺めていた。 つい1時間ほど前…

29

狂喜なるオートファジー

先ほどまでの温かさがほんのりと彼の身体に残っている。 すでに心臓は止まっているはずなのに、その余熱のような温かさに、『まだ心は生きているのね』と、私は錯覚を覚えた。 私は、そっと彼の横に寝そべってみる。 太腿に指を当て、上半身までなぞっていく。 男らしい筋肉に、柔らかな唇。 そのどれもが愛おしく思え、それと同時に儚く消えていく寂しさを覚えた。 あれだけベッドの上で、彼と私は狂喜乱舞していたせいか、綺麗に敷かれていたシーツには皴が寄り、ところどころ体液が飛び散ったせいか濡れ