カウンセリングを受けると悪くなる
「カウンセリングを受けると悪くなる」と感じることがあります。
カウンセリングで、心の痛い部分に触れると、普段の生活で気持ちが不安定になり怒りっぽくなる、悲しくなる、辛い夢を見るといったことはよく起こります。
そうなってしまうので「カウンセリングは意味がない」と判断するのは、ちょっと待ってみる方が良いかもしれません。
「産みの苦しみ」という言葉があります。人の心にも、変化していく時には、避けられない痛みというものがあります。
もちろん実際に、心の状態に合わないカウンセリング方法を用いることで、不必要な苦しさもあるため、その見極めは大切です。
トレーニングを積んでいるカウンセラーは、その見極めをしながら、あなたの痛みに耳を傾け、痛みの程度をコントロールし、耐えられる痛みの中で、心の整理が進むようにサポートしていこうとします。
カウンセリングで話したことで苦しくなったり、辛くなったことがあったら、次回の面接でカウンセラーに報告し、一緒に検討できると良さそうです。
あなたの疑問にちゃんと答えてくれて、あなたが安心できると思うカウンセラーであれば、あるいは「安心はできないけど、もう少し関わってみても悪くないかな」という反応が返ってくるカウンセラーであれば、一安心です。
まだ関係を続けてみて良さそうです。
ただ実際には「報告できれば苦労はない」ということもあるでしょう。人への不信感が強くおありの場合、「報告してもカウンセラーに否定されそうで怖い」ということや、「それを伝えてみるという選択肢すらない」場合もあるでしょう。
それに、心の痛みをやわらげるためにこれまでの人生で身につけてきた対処法が誰しもにあります。
人の心はその方法を使って、今までと同じパターンを繰り返そうとします。その場合、そもそも自分の心が痛んでいるという自覚をすぐには持ちにくい場合も多いでしょう。
(例えば、辛くなったら、食べることで紛らわす、相手をディスってやり過ごす、自分を責めまくってやり過ごす、お酒を飲んで忘れる、引きこもりネットの世界に浸る、枚挙にいとまがありません)
これらの方法は、クライエントさんにとって自分を守ってくれている大切な方法ですから、簡単に手放せないのは当然だと私は思います。
クライエントさんの態度や発言、表情、そのパターンや傾向、クライエントさんとの関係で起きていること、いろいろな面からどれくらい痛みを感じていらっしゃるか、カウンセラーは見極めようとしていきます。
痛みの具合をカウンセラーと共有することは、すごく難しいことです。「カウンセラーなんだから、痛みを共感してくれるプロなんでしょ??」と思われると思いますが、そう簡単ではありません。
痛みの全くないセラピーが出来たら理想的ですが、それは、現実的でなく、あり得ないと思います。魔法はありません。
もし、痛みのないカウンセリングを受けているとしたら、それは歯科治療に例えるなら、歯を削るとか抜歯ではなく、歯の表面をなでているだけでしょう。
カウンセラーの自己満足にクライエントさんがつきあわされてるだけとも言えるでしょう。
「痛くはなくて、とってもいいカウンセラーなんだけど、いつまで経っても、治らない」というような結果になるでしょう。
「痛かったら手をあげてください」と歯医者さんが言うように、削る痛みを確認しながらゆっくり少しずつ削るとか、この状態なら薬物療法という”麻酔”の力も必要だと判断するなど、こころの痛みのアセスメントはカウンセラーにとって、とても大切な仕事です。
そのアセスメント作業は、ずっと続きます。何べんも何べんもお会いして、やっとその痛みが見えてくることもあり得ます。
当ルームでは、クライエントさんの心の痛みを理解しようとし続けます。
そしてそれが耐えられる範囲の痛みの中におさまるように思案しながら、少しずつ前に進められたらと考えています。
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